UCI と JCF と5つの輪っか(4)

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チャリ組織のお話も今回で最終回。なぜ JCF ライセンスが必要か、というところまで考えてみたいと思います。

世界選手権

そういえばオリンピックとは別で、UCI の世界選手権というのもありますね。虹色ストライプの入ったアルカンシェルはマイヨジョーヌにも劣らぬ(いや劣るか?)魅力のあるジャージです。

シクロクロス世界戦への出場権はどうなっているのでしょう。男子エリート。

  • 国別ランキングが1〜5位: 6名+補欠3名
    (UCI ランキング50位以内の選手の上位3名が含まれること)
  • 国別ランキングが6位〜: 5名+補欠3名
    (UCI ランキング50位以内の選手の上位2名が含まれること)
  • + 前世界選手権王者
  • + UCI ワールドカップランキング首位者

最大で8名。しかし例えば国別ランキングで最下位だったとしても5名は出走できるようで、ロードと比べるとゆるいですねえ。ロードほどメジャースポーツでもないし、UCI としても空気読んでエントリーしろな、というところもあるでしょう。

ちなみにロードレースについては「毎年、理事会は参加者選抜の仕組みを決定する」とあり、ルールブック上では定められておりません。

世界選手権への参加人数は五輪と同じく、国内連盟に対して割り当てられています。

9.2.001 With the exception of team time trials, it is the National Federations who
select riders to participate in World Championships.
チームタイムトライアルを例外とし、世界選手権に参加する選手を選考するのは国内連盟である。
(チームタイムトライアルは UCI ワールドチームに対して割り当てられています。申込も国内競技連盟ではなくチームから直接行なうみたい。@9.2.021)

よって JCF 登録の無い選手は UCI 世界戦への道はない、ということになります。

JCF ライセンス

ここまでクドいぐらいの遠回りでしたが、組織の仕組みとつながりを考えると「なぜ JCF ライセンスが必要か」という問に対しての1つの答えは

「五輪や世界戦への出場権のため」

と言えるでしょう。ワールドカップもそうだったかな。

一般の UCI レースについては個人での申込となるため、国内競技連盟が絡む必要はありません(UCI ライセンス取得は必要になりますが)。しかし五輪・世界戦についての選考権は JCF に与えられているため、JCF がナショナルチームを組んで、という形式のため、個人では参加することができません。

より上のレースに参加しようと思ったらナショナルチームの一員にならざるを得ません。

JCF ライセンス2

「いや、僕は世界戦とかそういうレベルじゃないし、そもそも国内レースしか出ない。JCF ライセンスも必要なくね?」

確かに。

僕もそう思ったところもありましたが、今回書いていて1つ気付いたのは実は UCI が自転車競技のなんたるかを定めているということ。

自転車競技とはなんでしょう?

モーター付いていても良い?
シケインの高さはいくらまで?
スタート順はどうやって決める?

もちろん、歴史的に定まってきた部分もあるでしょうが、実は誰かしらが「ルール」というものにより定義をしなければいけません。モーターは不可、ドーピングをランダムにチェックする、シケインは40cmまで,,,

それを行っているのが UCI であり、その出先機関が JCF になるわけです。

逆にこれらの組織が無かったら?レースオーガナイザーはそれぞれで別個にルールブックを作らなければなりません。また、世界統一されたルールがないため、海外遠征に行ったらモーター OK だったりするかもしれないのです。

所変われば?

UCI は「世界の自転車競技を統括する団体」であり、JCF は「日本国内の(同上)」と定義されています。UCI, JCF として世界に通用するルールを提供・運用しており、そのルールが適用されるレースを走るのだから、JCF 登録してくれ、というのはまあ筋は通っていますね。

それ以上に、レース主催者としては「ルールがわかっている」ということが明らかでない参加者を走らせるのは非常にリスクがありそうです。もちろん個別の縛りとして定められているかもしれませんが、参加者はライセンスという形式で宣誓をしているわけではありません。だからこそ JCF 登録者と非登録者でレースを分けているのでしょう。

少なくとも「JCF ライセンスを持っている」のは「ある程度わかっている競技者である」という証明書になりそうです。

(実際のところは「無いよりマシ」な程度かもしれませんが、その辺は難しいですね…。)

JCF ライセンス3

ここからは AJOCC 絡み。

実は AJOCC の競技規則ページの冒頭には以下のような記載があります。

UCI , JCFは共通の競技規則であり、これが基本である。
UCI : PART 5 CYCLO-CROSS (version on 07.06.2016) (改正箇所のみ)
JCF : 05_シクロクロス競技 (2016/06/07版)
UCI規則では9月から2月末であるが、AJOCCでは3月までの試合を対象にする。(2012.9.1)

(以下、憶測・妄想成分多め)

UCI, JCF の競技規則の使用をうたっていますが、であれば JCF としては「うちの競技規則でレースするなら、参加者は JCF 登録者が望ましい」と理論展開しそうです。さすがに「でないと UCI レースさせてやらないからな」というバカなことは無いと思いますが。

それからシクロクロス全日本選手権について。

現状では AJOCC が開催している JCX シリーズが JCF 全日本の予選になっています。

もし全日本の予選に JCF 未登録者が出走していたら、AJOCC としても JCF としても色々面倒ですし、JCF として「全日本出走の権利を与えているのだから、対象者は JCF 登録させて」というのもうなずけます。

C2, CM1 には少し当てはまりませんがレベルとして初心者ではなく「競技者」であることは確実で、JCF の主題としても登録はしてほしいのでしょう。

JCF

なぜそんなに登録者を増やしたいか。

登録料がほしいのか?と思って JCF の報告書関連ページの平成28年度 収支予算書 損益計算ベースを見てみましたが、JCF ライセンスによる収益(*1)は

  • 選手登録:3,001万円
  • 審判登録:543万円
  • アテンダント登録:500万円

合計4,040万円ぐらいです。1万人ちょいぐらい?しかし、実は収益全体では8億1272万円(*2)で、割合としては5%に満たない程度なのです。手間としてはマイナスぐらいな規模という印象。

どちらかというと UCI や IOC に対して「うちの登録者が xxx 人になりました!どうです?スゴイでしょ」と言いたいのかなぁ、とか想像します。「自転車競技を統括する」というお題目という観点からも数字は欲しいのでしょう。

*1:経常収益→受取会費→競技者登録料受取会費など

*2: ちなみに収益の90%近くが補助金。余談ですが、JOC からの交付金はたったの20万円。

まとめ

ここまで JCF を擁護しているような論調になってしまいましが、2016 JapanCup 女子レースの審判問題などもあったり、いまだに JCF ライセンスあるだけでは UCI レースに出られない(外国では出られるそうだ)などの問題点もあったりで、どちらかというと個人的には JCF にはあまり良い印象がありません。

しかしキライだ、といっても首のすげ替えができるわけではありません。

ここまでで見てきたように、組織として UCI の認可を受け、IOC, JOC の認定を受け、補助金をガッツリ受け取る大きな組織であり、これに取って代わるというのは現実的に不可能です。

ならば仲良くやっていきましょう。JCF ライセンスだって何万円も取られるわけでもないし、賠償責任保険もついています。それより何より JCF が日本国内の標準ルールを決めてくれている状態なのです。それが無くなったら困りますよね?AJOCC としても UCI レースなど JCF の協力無しには魅力的なレースは行なえませんし。

ハイ。

以上、UCI とは JCF とは何ぞやというところを見てみました。いろいろ書きすぎてしまった感が強いですが、まとめ。

  • UCI が競技ルールを作ってる。
  • JCF は UCI の出先機関であり、五輪や世界戦へ通じている。
  • JCF が全日本も主催してるし、その他国内の競技ルールを管理している。

JCF もアナウンス不足でわかりづらい組織ですが、裏方として色々とやってくれている団体であるようです。無くてはならない組織ですので、頑張ってほしいですね。

以上、オリンピックから AJOCC まで、でした〜。