今回のネタは80%ルール。CX Magazineの記事が元ネタです。日本では C1, CL1 の JCX, UCI レースで適用されることが多いかな。確かに必要なルールではあるのですが、外国では80%ルール無しのレースも少なくないようです。さて、どこまで厳密にすべきなのでしょうか。
元記事は2016年12月6日の「USA Cycling Issues 80% Rule Guidance in CX Best Practices Document for Officials and Race Directors」より。タイトルの意味は「レース運営者のための80%ルールの適正な運用ガイドラインを USA Cycling(協会)が発表した」。
※斜め読みでやったので和訳はざっくりです。
80%ルール
と、その前に「80%ルールとはなんぞや」。ルールブックだと競技規則の5.1.052に記述があります。ざっとまとめると以下の通り。
- レース第1周目のタイムの80%のタイムを基準とする。
- レースの先頭から基準タイム以上遅れた選手はレースから除外される
(実際には指定ゾーンにてコースから出される) - 最終周回にいる選手には80%ルールは適用しない
- UCI 世界戦・ワールドカップでは80%ルールは適用されなければならない。
- その他のレースについては運営者の判断で。
- ラップアウトした順序を勘案しつつリザルトには掲載する。
簡単に言えば「周回遅れになりそうな選手を除外するルール」であり、一番大きな目的は「周回遅れの選手が先頭争いに影響することを避ける」です。
アタックして2位を引き離したのに、シングルトラックで周回遅れの選手に追いついて、なかなか抜けず→2位に追いつかれる、とか。
先頭が周回遅れの選手に追いついちゃって、追いつかれた側が熱くなってて気付かずにオイオイということは実際にも結構あると聞きます。ベストリザルトをという気持ちもわかりますが、遅れた選手は自分の位置を把握し、レースが来たならば明確にコースを譲るのがマナー。大抵観客も「トップ来てるよ〜」とか教えてえくれるものですし、それが聞こえないぐらい熱くなっているならテンションのコントロールができていません。レースは攻め8割、守り2割ぐらいの心の配分がベスト。
まあしかし、80%ルールがあるレースでは遅い選手は「最後まで走れない」可能性があるわけで。まだ30分なのに、ってところでレース終了を告げられるのは結構こたえます。出走した選手のうち9割が降ろされてがっかりしているレースだったりすると、可哀想だというのもまた然り。日本のレースのレベルがまだバラツキがある(高いところでまとまっていない)、というのも一因だとは思いますが。
話の経緯
CX Magazine によると、Steve Tilford さんがブログで Jingle Corss 2016 の Masters レースについての記事を書いたのが発端の1つ(*1)。ちなみに Tilford さんはアメリカの Elite, Masters のナショナル選手権で何度も勝っている強い方のようです。
Masters で様々な年代が時間差で出走し、ごちゃごちゃな状態(しかも200人以上!)。そして80%ルールで除外すべきでない選手まで除外されるというカオスが展開。Steve さんは運営者がレースを時間通り進めるために80%ルールを使って選手人数をコントロールしたのではないか、とも。
最後の方に書いてる言葉が印象的。まとめると以下。
- 周回遅れの選手が居るのもレースの一部だ、というのが僕の答え。
- 全ての選手が同じ周でゴールできる古き良き時代に戻ろう。
- (とくにローカルレースでは。)
- もし君がレースで勝てるなら、周回遅れ君をパスするぐらい問題ないじゃないか。
- 選手をパスするのも競技の一部だ。例えば F1 の用に。
- 選手をパスするのは難しいものだが、F1 ほどじゃない。
なるほどな答えですね。割り切っているというか。
80%ルールが正しく運用されず、かつそれを質問したが USA Cycling からの回答がなかったという問題点も含めての結論のようですが、確かにきちんと運用できないんだったらやらなくていいじゃん、というのは当然。
*1: (もう1つは米オースティンで行われたナショナル選手権の Junior レースで、3つのジュニアのカテゴリーが混走し、かつ80%ルールが運用され、Junior Women15-16 のトップを走っていた Turner Ramsay が間違って除外された、というもの。Turner ちゃん大泣き。)
ガイドラインの作成
というわけで、80%ルール運用問題が大きな問題に発展してしまい、USA Cycling 協会が運用のためのガイドラインを定めたのが、今回のネタ。
と、前フリだけでスミマセンが、今回はこの辺で。次回は実際にガイドラインの内容を見てみましょう。