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80%ルールとUSA運用ガイドライン (2)

前回投稿の続き。今回はガイドラインの内容に入っていきましょう。ガイドライン原文は USA Cycling に置いてあります。「USA Cycling cyclocross best practice」で検索すると出てきます。

全部翻訳するのは辛いので、ざっくり要点だけで。本文中に(*ほにゃらら)と入っているのは僕のツッコミ。USAC = USA Cycling(協会)。

それでは行ってみましょう。


シクロクロスレース運営のための Best Practice

2016 Cyclocross シーズン(*1)において、周回遅れやリザルトについて大きな問題になってしまったが、ルールの解釈やレーススケジュールなど沢山の問題があったためだろう。というわけで以下に運営指針を述べる。

(*1: 2016-17 シーズンと思われる。)

選手のレース終了処理

選手がレースを終了する場合は3種類。

  • レースに残っている選手は、ゴール順位と周回数でリザルト決定。
  • 周回遅れにされた選手は、周回遅れになった後でレースから除外される。除外処理は「ゴールより前の決められた場所」で行なう。(*周回遅れを予想してラップされる前に除外するのはダメらしい。)
  • 80%ルールであらかじめ的に除外された選手は、周回遅れにはならない。(* この文章よくわからず。リザルトの周回数計算に関わる?)

どうするかは運営側で議論し、すぐに選手にきちんと通知するべし。考慮すべき項目は以下。

  • レースのレベル(UCI エリートなのか、ホビーなのか)
  • スケジュール的な制限
  • 出走人数
  • 混走レースかどうか/混走の状態
  • 予想ラップタイム
  • コースの状態(狭い?テクニカル?だだっぴろい?など)
  • レースディレクターの願望
  • 計測システムのタイプと性能
  • 審判の数
  • 天候とコースコンディションの低下

80%ルールの使用

レース展開が重要な場合に80%ルールを使用する。すなわち、先頭が来る前にお邪魔さんを排除してトップ選手が十分に力を発揮できるようにするのだ。だがしかし、80%ルール適用は UCI 世界選手権とワールドカップのみで必須とされている。よってそれ以外については現地判断でよろしく。また、アマチュアレースではなく競技レースとして導入するかを考えるべきことである。

80%ルールを適用するとレース展開に絡めない選手の競技時間は短くなってしまうが、特に下位カテゴリーのレースでは望まれない結果となる。運営はよく選手側とコミュニケーションをとり、状況を把握すること。「UCI レースであれば80%ルールが使用される」が一般的な認識。

もちろん、80%ルールが正しく運用されること。USAC の規則にもあるように、80%ルールの使用は超厳密的にするものではない(* 原文: the use of 80% is an approximation=近似)。目的は次の周で先頭に追いつかれないように、なるべく遅く(*2)選手を除外することだ。選手になるべく多くのレース時間を与えるよう頑張りなさい。特にレース展開を左右する終盤での80%ルール運用が重要だ。

(*2: なるべく遅く= as late as possible で誤訳ではありません。ここだけに限らず、随分お客様=クレーマー対応的な気もしますが。)

また、もしある選手がトップの選手が来る(*3)前にフィニッシュラインを超えて最終周回に入れるならば、完走を許すべきだ。また、大会スケジュール的にもそれができる状態にあること(後述)。

(*3: 原文 = leader comes in for a finish。ゴールエリアに来たら、という程度だと思われる。ゴールラインについては明言していない。)

USAC のポリシーとしては、80%ルールは Elite レベルのレースだけ。アマチュアイベントでは運営側からの要求がない限りこのルールは使うべきでない。もし使うならばきちんとアナウンスしましょう。

全ての選手にレースを続けさせる

ほとんどのレースでは周回遅れになってもレースの続行が許される。それにより、表彰台を望むような選手でなくとも、エントリー料の対価として満足するだろう。以下のいずれか(もしくは複数)ならばレース除外は必要ないだろう。

  • アマチュアイベント
  • 小さな規模のレース
  • 複数カテゴリーの混走レース
  • 難しくないコース

周回遅れを良しとすると、計測・集計は大変になる。レースディレクターは混走などにも対応できるそれなりのシステムを使うこと。

(* ここから具体的なレース内容を挙げて解説する。)

例1:

  • 男子 U23 国内選手権のレース
  • 80人出走
  • 先頭の始めの2周のタイムの平均が7分

このような Elite レベルのレースでは表彰台どうこうが非常に重要であり、80%ルールは適用されるべきだ。5:36遅れたら除外。ただし最終周回突入までに先頭に追いつかれなければ続行でOK。

例2:

  • UCI CX のレースが開かれている週末に開催されるアマチュア・マスターズのレース
  • 35+と55+クラスの混走(成績は別)(*4)
  • 出走は併せて120人
  • ラップタイム予想は8分程度
  • 35+の選手を前に並ばせて同時スタート

UCI レースに関係しないアマチュアイベントであり、参加者にとってネガティブであろうし、80%ルールは適用すべき必要はない。もし適用したら55+のかなりの選手が除外されてしまい、もしかすると「実際のゴールにたどり着くのは数名のみ」とか「間違って55+のトップを除外してしまった」という事態を招いてしまうかもしれない。除外はせず、すべての選手をレース先頭と同じ周にてゴールさせるのが良い。

*4: 35+ とは35〜40歳クラス、55+ とは55〜59歳クラス。

例3:

  • 地域レース
  • 9〜18歳の少年少女のレース
  • 15-18歳グループが最初にスタート → 30秒後に9-14歳グループがスタート
  • 人数は合計30人
  • 予想タイムは15-18グループで8分程度

これもアマチュアイベントである。80%ルールを適用するなんてしたら涙々々になるだろう!遅いであろう低年齢クラスが後ろからスタートしているが、それがさらに上の年齢クラスの基準で足切りされてはたまらない。こういったときはもちろん除外処理なしで、同時スタート、もしくはより少ないタイム差でのスタートにするのが良いだろう(*上のグループの先頭が追いついてしまうのをできるだけ遅らせるため?)。スタートの時にグループの境界に線を引いてしまうもよい。そうすれば競争相手がよく分かるし、選手の多さに混乱することもないだろう。ローカルレースでしかもキッズクラスだ。楽しいレースにしようじゃないか。


半分来たので、とりあえず今回はここで終了。概ね当たり前なことしか書いてないですが、ガイドラインなのでこんなもんでしょうか。

適用する対象レースとしては、やっぱり UCI であるか、Elite なクラスであるか、という境目に注目しています。日本でも UCI は必須。JCX もほとんど適用、ローカル C1 では無しというのが一般的ですね。日本では混走レースで80%ルール適用したことは無かったと思います。

個人的には「最終周回突入前に80%はオーバーしていてもトップに追いつかれないならOK」という指針が気になります。過去に出場した UCI レースで「トップ来てるけどまだ差があるから、このままゴールライン超えられれば完走できるかも!」というところで厳密80%適用で終了〜、というのが何度あったことやら。マイアミとかマイアミとか。いや、もちろん開催側がそういう方針だったというだけで、それで良いんですけどね。でもやっぱり、確かにちょっと悲しかった、かな?

さて、次回は “Scheduling and Timing” から参りましょう。

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コース(その2/スタート)

さて、前回の投稿でコース全体について見てみましたが、今回はスタート周りについて見てみましょう。

レース時間中で最も選手密度が高いスタート。スタートの出来がレースに大きく影響する場合もあり、スタートは全力ダッシュすべき時でもあります。

平等さを保ち、レースとしての危険を分散させるためにもスタートに関しては様々なルールが決められています。

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