月別アーカイブ: 2017年4月

UCI Code から UCI ID へ(2)

前回に引き続き、新しく設けられた UCI ID について。今回はその実際を見てみましょう。

ルールブックの変更点は以下のリンクにまとめられています。英語。
http://www.uci.ch/mm/Document/News/Rulesandregulation/17/68/12/1-GEN-20170328-EN_English.PDF

他の情報はネット上で見つけたものが中心。

What is UCI ID?

概要としては facebook で見つけた Le Samyn des Dames さんの記述がわかりやすい。

  • ユニークな11ケタの数字
  • 123 444 567 89 というように読みやすいように区切られる
  • 1人の選手・審判として競技人生を通じて同じ番号を使用
  • UCI レース、大陸選手権、国内選手権に参加する選手に与えられる
  • それらに出場しなくても UCI ID はライセンスに記載されるかも
  • UCI ID が記載されたライセンスを発行するのは国内選手権の責任

UCI ルールも見てみましょう。ざっくり和訳でどうぞ。

  • 国内選手権はもちろんUCI カレンダーのレースに参加可能な選手(a)には UCI ID が付与されなければいけない。(※ susceptible of = が可能な)
  • その選手に UCI ID を与えるのは各国競技連盟の責任
  • UCI ID は UCI から各国競技連盟に提供
  • 選手が最初にライセンス申請したときに UCI ID が割り当てられる
  • UCI ID はカテゴリーや発行競技連盟にかかわらず、選手のどんなライセンス上にも表示されなければいけない
  • (a)以外の選手についても UCI ID が発行されても良いし、各国競技連盟が定めた識別番号が与えられてもよい
  • その他の審判などにも UCI ID が与えられ、ライセンスに表示されること

「どんなライセンス上にも表示されなければいけない」shall appear on any licence he may hold.とありますが、JCF ライセンスも含むのでしょうか。全日本出場資格ある選手なら、というか UCI ID が発行済みの選手なら JCF ライセンス上にも記載して欲しい所ではありますが。

ちなみに UCI ルールブックには11桁だとか見やすいように区切るとかは全く書いていません。

また、ライセンス上の記載項目にも変更があり、

  • UCI ID
  • UCI ID required (not yet holder of  UCI ID but  necessary for following season) : yes/no
    UCI ID が必要であるか(未取得であるが、次のシーズンに必要か):yes/no

が表示されなければいけません。

後者は日本の UCI ライセンスで考えると今ひとつ意味わからず。UCI ライセンス取った時点で UCI ID 持っているはずですから。海外で1月に開催するシクロクロスの国内選手権対策かな?

UCI ID と DataRide

ちゃんとユニークな管理番号が与えられるのでリザルトが正しく、UCI としては簡単に管理できるようになるでしょうが、それだけでしょうか?

じつは UCI ID で検索するとこんな資料が出てきます。ヘッダーに UCI のロゴが貼ってあり、内容からするに UCI から各国競技連盟に対する資料のようです。内部資料っぽい感じもしますが、まあいいや。

ここの Q and A に沿った形で進めてまいりましょう。

Q1: UCI ID って何?重要?

  • (11ケタだよ、とか省略)
  • スポーツでも一般生活でもデータが果たす役割は大きくなってきたので、UCI もデータの集積と利用を強化する必要がある。僕らは自転車界の管理者であるが、これまでのデータはまとまっておらず、利用は難しい。

確かに数字なんてコンピュータに管理させて、人間は運用に注力するのが現代式ですよね。

Q2: うちの国には数万人の選手がいるけど、90%の選手は UCI の国際レースに出ないよ。それらの選手全てに UCI ID は必要なの?

  • UCI ID は UCI レース、大陸選手権、国内選手権のリザルトを集積管理するために必要だ。
  • これらの大会に出場する選手とそれ以外を分けて管理できるのであれば、UCI ID をライセンスに表示しなくてもよい。
  • 小さな規模の競技連盟ならば UCI ID 関連の権限渡す。その場合には全ての競技者に UCI ID が振り分けられることになる。

この文章から推察するに、日本で言うと JCF ライセンス番号を全て無くして UCI ID に切り替えてしまっても良いし、現状の UCI ID と JCF 番号の併用のままでも良さそうです。ただ、選手としては識別番号なんて少ないほうが良いのだから、UCI ID に統一して欲しいところ。

Q3: 何が良くなるの?

  • UCI ID によって選手のリザルト・ランキング・経歴(ドーピング関連とか?)、それから審判の優先レース・報告・育成などにも役立つ。
  • 僕らはこれらのデータを競技連盟と関係者に提供し、使ってもらう予定だ。

Q4: いつから?

  • 今から!(2016年9月)
  • 2016年4月には全ての各国競技連盟にこのプロジェクトが通達された。
  • 2016年8月には各国競技連盟に接続情報の詳細(担当者など)を提供してもらった。
  • 2017年1月からは UCI レース(各国選手権含む)の全てのリザルトは新しいデータベースに電子的に提供される。
  • そのため、上記のレースでは UCI ID が必須となる。

Q&A 文章の発行日が9月で運用開始が年明けから。

「今から!」って辺りに見切り発車感が…。大丈夫か?

Q5: データの守秘義務について。

この項は意味が取れなかったのですが、「UCI 登録したら生年月日とか公開されるからよろしくね」というように UCI の規則を変更し、ある程度の個人情報も公開できるようにする、という意味だと思われます。性別とか生年月日とか必要ですよね。

Q6: 次は?

  • 現在 (2016/9) で UCI ID により、 UCI ライセンス取得者リストを UCI データベースで閲覧でき、以下の情報を含んでいる。
    • 過去3年間に UCI カレンダーのレースに参加した選手
    • 国際審判とテクニカルデリゲート
    • その他審判
  • 2016ライセンスを埋めくるために「UCI ライセンスを取得したけど UCI レースに出場しなかった人々」のリストを下さいって頼んだよね?
  • 早くよこせ。

Q7: それから?僕らは2017ライセンスをすぐに発行すべきなの?

ここからはちょっと専門的な話なので簡単に。データをどうやり取りするか、という話になります。

  • もし、専門のウェブサービスを持っているようならば、10月の半ばごろまでにはネットを通じて UCI につなげて UCI ID を取得できるようにするよ。
  • ウェブサービスとか知らんという所は、とりあえず手作業でやろう(Excelのリストやりとり?)。機能が完成したら権限渡すから、発行なり変更なり勝手にやってくれ。
  • 中くらいの規模の競技連盟については選手数も多いだろうから、適切なファイルやりとりでできるようにしよう。

要するにまだできてないけど、ちょっとしたウェブシステムを作って UCI とつなげるか、ファイルをやり取りして手動でやるか、違ったインターフェイスで UCI にデータ提出するか、ってところでしょうか。

各国競技連盟としては面倒だろうなぁ。UCI の中の人も面倒だろうなぁ(苦笑)。

Q8: UCI はデータで何をするの?

  • データは自転車競技を適切に管理するためだけに使われること。
  • UCI は第3者に情報を提供しないし、
  • ライセンス保持者に連絡することもない。
  • 将来的には選手が直接アクセスして自分の情報を直接アップできるようにするつもりだが、それは2018年ぐらいかなぁ。

この文章には書いていませんでしたが、”DataRide” というのが UCI が作った新しいライセンス・リザルト管理システムの名前のようです。

DataRide

なんか専門的な話が多すぎてアレなので、ざっくりまとめ。

  • UCI ID でちゃんと管理できるようになったよ。
  • DataRide っていう新システム作ったよ。
  • 各国競技連盟は DataRide のやり方でライセンス発行・リザルト提出などしてね。
  • そのうち選手の直接ログインして色々できるようになるかもね。

UCI ID 以外の部分については、とりあえず数年間は選手にとっては関係ないかもしれませんね。

 UCI ID はどこに?

さて、ここからは日本の選手目線でのお話。

今年から全日本選手権と国内で行われる UCI レースについては JCF ライセンスで出場できるようになりました。

しかし待てよ、

  • 先の Q2 から考えるに、上記レースに出場する選手は UCI ID を持っていなければならない。
  • だが、JCF が発行した2017年ライセンスには UCI ID は記載されていない。
  • また JCF からは UCI ID に関するアナウンスはない。
  • よって、現時点では選手自身が自分の番号を知る手段が無い…

「UCI ID 無いのにどうやって UCI レースにエントリーするねん。」

せっかく設けた識別番号ですが、使わなければ豚の真珠。

一番の問題点は3つめの「JCF のアナウンスが無い」ということ。どうするつもりかぐらいは早めに知りたいですね。ロード&MTB はもう始まってるけどね。

ただ、全日本・国内UCI のどちらにせよ国内レースであり、JCF が運営に関わるレースですし、出場選手は少なくとも JCF ライセンスは持っているはず。ということは JCF は JCF 登録ナンバーから UCI ID を特定することはできるはずなのです。なので JCF ライセンス持っていればどうにかなりそうな気はします。

冒頭の方にも少し書きましたが、

(1.1.006.2a)
The national federation is responsible for ensuring that all riders susceptible of taking part in the aforementioned events are given a UCI ID.
前述のレースに出る資格のある全ての選手に UCI ID の付与をしっかり行なうのは各国競技連盟の責任である。

と、バシッと書いてあります。UCI の責任丸投げ押し付けではあるのですが、そこまで面倒みれないからちゃんとやってね、というところが本音でしょうか。

そんなわけで(UCI の競技規則を読んでいれば)JCF も裏でちゃんと UCI ID を割り振っているでしょう。

しかしやはり何らかのアナウンスは欲しいぞ。

まとめ

DataRide については UCI のシステムがまともに動いてない、JCF も人によって運用方針が異なる、といった噂も聞こえています。

新しいシステム、しかも世界をまたぐ規模のものなので、試用期間が2,3年あってもいいと思うんだけどなぁ。Q&A 文章のノリなどを見るに、UCI もとりあえずスタートしちゃった感をひしひしと感じます。

ただ、選手にとっては UCI ID が付くという点以外変わらないかもしれません。逆に運営側にとっては新システムがスタートということでかなり大変になりそうな予感大。UCI レースの時は選手は差し入れをそっと持っていきましょう。

UCI ID は作られるべくして作られたという印象。悪く言えばやっとやったか。UCI 自身としても管理はしやすくなるでしょう。

DataRide は長い目ではレース結果を UCI のサイトで見れたり、より便利になる改善だと思います。運営側にとっては手間として面倒かもしれませんが、UCI および各国競技連盟には頑張って欲しいですね。

以上、UCI ID にまつわるエトセトラでした!

UCI Code から UCI ID へ(1)

実は今年2017年の1月1日から UCI Code が事実上廃止され、UCI ID というナンバーが新設されています。

今回はこの UCI ID がなぜ今になって出てきたのか、という経緯を見ていきましょう。

What is UCI Code ???

そもそもユーシーアイ・コードって何?

UCI Code とは、UCI ライセンス取得者に対して割り当てられるコード、つまりは ID のようなものです。和風に言うと識別番号。唯一無二であること。

例えば山田太郎という名前の選手が複数名いたとして、名前だけではどちらの山田君なのかわかりません。また、結婚して鈴木太郎になったりしたら名前だけでは同一人物であるかはわかりません。なので、こっちの山田くんは123番、こっちは245番というったように、ユニークな番号やコードを付けて管理しましょう、というのが識別番号の趣旨です。

上記のような違いを見分けるためにも AJOCC コードや JCF 番号があるのですが、同様に UCI 登録者についても UCI Code という認識番号が設けられていました。

UCI Code orz,,,

この UCI Code は在住国(*1)と生年月日を組合せた11文字のコードになっています。

例えば日本在住、1999年の12月3日生まれの人の場合「JPN19991203」というコードになります。日本の2012年3月4日ならば「JPN20120304」。

,,,

待て待てい!これじゃ山田太郎と同じじゃないか。

そう、同じ国の人間で生年月日も同じだったら同じコードが発行されることになります。名前違ったとしても!

誰だ、これ考えたやつ、、、いや待てよ。JCF が時代錯誤の運用してて日本だけでこうなっているのか?そうだよな、そうあってくれ。

と、思いましたが、調べてみると racement.com というサイトの記事

the UCI code consisted of the rider’s country and date of birth which caused a problem whenever two riders from the same country were born on the same day.
(著者訳: UCI コードは選手の国と生年月日からなっているが、2名の選手が同じ国で同じ日の生まれだと問題となってしまう。)

とあり、国+生年月日でコードを作る、というのは世界共通だったもよう。

UCI 何やってんすか。

*1: 在住国ではななく国籍かも。でもフランスで取得したら FRA になりそうな気もする。

スーパー蛇足タイム。ちょっと計算してみましょう。

UCI 登録者について、生まれ年が同じ選手が50人いるとします。ロード、MTB を含めればそれぐらい居ますよね?それらの選手が全て異なる誕生日である確率は

1 x 364/365 x 363/365 x 362/365 x 361/365 x ,,, x (365-50)/365
= 364P49 / (365^49)
= 0.029626,,,

というわけで3%!

ってことは、97%の確率で生年月日がバッティングするってことですよね。どうやって運用してたんだろう。

Next, LICENCE No.

まあしょうがない。例えば IP アドレスだってこれだけ増えるのを予想できていなかったそうだし。同じようにこんなに UCI 登録する選手が増えるとは思っていなかったのでしょう。

そして UCI も手をこまねいていたわけでは無さそうで、僕が現役の時には UCI ライセンス上にはライセンスナンバーというものが記載されていました。

手元に昔のライセンスが見当たらないので http://nobeyamacyclocross.cc/?p=185 の画像を見て書いてみました。

2012 UCI ライセンス(赤文字は筆者による変更)

UCI コードとともにライセンスナンバーが記載されていますね。なぜかアンダーラインで強調されています。

なるほど、UCI Code ではなくもう1つナンバーを設けてそれで管理するようにしたのか。いや、それだったら UCI Code はもう要らないような気もするが、何かの都合だろうか。まあ、UCI Code 問題は解決したし良いか。

と、その時は一人合点していたのですが…

次の年かその次の年に、ライセンスカードに記載されている番号が変わっていることに気づきました。

(以下システム屋的視点→)おいおい、リザルトとか UCI ポイントとか管理するのだったら1人が1つの番号を持ち続ける方が良いよね?ってか変える意味あるのか?設計まちがってるぞ。

というわけで、実はこの LICENCE No. は JCF が UCI 登録者を管理するために独自に設けたナンバーじゃないかと僕は思ってます(中の人教えてください)。UCI のルールブックにも無かったみたいだし。

余談:名詞としては LICENCE はイギリス英語で、USA では LICENSE が一般的とのこと(参考: http://www.toishi.info/email/license_licence.html)。

UCI ID came!

というわけで、UCI Code という前時代的なものを廃し、新しく識別番号を振り直しましょう、というのが今回の改定なわけです。

細かい内容は次回にまわしますが、UCI ID は11ケタの数字による番号。多分 LICENCE No. のようにシーズンによって変わることもないでしょう。

だがしかし。

というかちょっとひっかかる事があります。今年 JCF ライセンスを取得した人はライセンスを見てみましょう。

なぜか UCI Code が記載されています。

UCI ルールブックを見ると UCI Code の記述は全て削除され、UCI ID によって置き換えられています。UCI としては UCI ライセンスについては UCI Code をもう使わないヨという意向と読めます。

が、JCF ライセンスにまだ UCI Code 載ってるのは何故?JCF は今季からネットワーク経由でのライセンス発行システムを開始しており、それとの兼ね合いで間に合わなかったのか、とか想像します。UCI ID にするからね、という UCI から JCF への通達は2017/1/1以前にあったとは思いますが。

過去との整合性のために載せるのは理解できます、と言いたいところですが JCF ライセンス上には Nationality と Date of Birth が載っているので意味なし。相変わらずフットワークが重いなあという印象。

まとめ

というわけで、UCI ID 登場までを振り返ってみました。

次回は UCI ID が実際どういうものなのか、何に使われるのかなど書いてみたいと思います。

UCI と JCF と5つの輪っか(4)

チャリ組織のお話も今回で最終回。なぜ JCF ライセンスが必要か、というところまで考えてみたいと思います。

世界選手権

そういえばオリンピックとは別で、UCI の世界選手権というのもありますね。虹色ストライプの入ったアルカンシェルはマイヨジョーヌにも劣らぬ(いや劣るか?)魅力のあるジャージです。

シクロクロス世界戦への出場権はどうなっているのでしょう。男子エリート。

  • 国別ランキングが1〜5位: 6名+補欠3名
    (UCI ランキング50位以内の選手の上位3名が含まれること)
  • 国別ランキングが6位〜: 5名+補欠3名
    (UCI ランキング50位以内の選手の上位2名が含まれること)
  • + 前世界選手権王者
  • + UCI ワールドカップランキング首位者

最大で8名。しかし例えば国別ランキングで最下位だったとしても5名は出走できるようで、ロードと比べるとゆるいですねえ。ロードほどメジャースポーツでもないし、UCI としても空気読んでエントリーしろな、というところもあるでしょう。

ちなみにロードレースについては「毎年、理事会は参加者選抜の仕組みを決定する」とあり、ルールブック上では定められておりません。

世界選手権への参加人数は五輪と同じく、国内連盟に対して割り当てられています。

9.2.001 With the exception of team time trials, it is the National Federations who
select riders to participate in World Championships.
チームタイムトライアルを例外とし、世界選手権に参加する選手を選考するのは国内連盟である。
(チームタイムトライアルは UCI ワールドチームに対して割り当てられています。申込も国内競技連盟ではなくチームから直接行なうみたい。@9.2.021)

よって JCF 登録の無い選手は UCI 世界戦への道はない、ということになります。

JCF ライセンス

ここまでクドいぐらいの遠回りでしたが、組織の仕組みとつながりを考えると「なぜ JCF ライセンスが必要か」という問に対しての1つの答えは

「五輪や世界戦への出場権のため」

と言えるでしょう。ワールドカップもそうだったかな。

一般の UCI レースについては個人での申込となるため、国内競技連盟が絡む必要はありません(UCI ライセンス取得は必要になりますが)。しかし五輪・世界戦についての選考権は JCF に与えられているため、JCF がナショナルチームを組んで、という形式のため、個人では参加することができません。

より上のレースに参加しようと思ったらナショナルチームの一員にならざるを得ません。

JCF ライセンス2

「いや、僕は世界戦とかそういうレベルじゃないし、そもそも国内レースしか出ない。JCF ライセンスも必要なくね?」

確かに。

僕もそう思ったところもありましたが、今回書いていて1つ気付いたのは実は UCI が自転車競技のなんたるかを定めているということ。

自転車競技とはなんでしょう?

モーター付いていても良い?
シケインの高さはいくらまで?
スタート順はどうやって決める?

もちろん、歴史的に定まってきた部分もあるでしょうが、実は誰かしらが「ルール」というものにより定義をしなければいけません。モーターは不可、ドーピングをランダムにチェックする、シケインは40cmまで,,,

それを行っているのが UCI であり、その出先機関が JCF になるわけです。

逆にこれらの組織が無かったら?レースオーガナイザーはそれぞれで別個にルールブックを作らなければなりません。また、世界統一されたルールがないため、海外遠征に行ったらモーター OK だったりするかもしれないのです。

所変われば?

UCI は「世界の自転車競技を統括する団体」であり、JCF は「日本国内の(同上)」と定義されています。UCI, JCF として世界に通用するルールを提供・運用しており、そのルールが適用されるレースを走るのだから、JCF 登録してくれ、というのはまあ筋は通っていますね。

それ以上に、レース主催者としては「ルールがわかっている」ということが明らかでない参加者を走らせるのは非常にリスクがありそうです。もちろん個別の縛りとして定められているかもしれませんが、参加者はライセンスという形式で宣誓をしているわけではありません。だからこそ JCF 登録者と非登録者でレースを分けているのでしょう。

少なくとも「JCF ライセンスを持っている」のは「ある程度わかっている競技者である」という証明書になりそうです。

(実際のところは「無いよりマシ」な程度かもしれませんが、その辺は難しいですね…。)

JCF ライセンス3

ここからは AJOCC 絡み。

実は AJOCC の競技規則ページの冒頭には以下のような記載があります。

UCI , JCFは共通の競技規則であり、これが基本である。
UCI : PART 5 CYCLO-CROSS (version on 07.06.2016) (改正箇所のみ)
JCF : 05_シクロクロス競技 (2016/06/07版)
UCI規則では9月から2月末であるが、AJOCCでは3月までの試合を対象にする。(2012.9.1)

(以下、憶測・妄想成分多め)

UCI, JCF の競技規則の使用をうたっていますが、であれば JCF としては「うちの競技規則でレースするなら、参加者は JCF 登録者が望ましい」と理論展開しそうです。さすがに「でないと UCI レースさせてやらないからな」というバカなことは無いと思いますが。

それからシクロクロス全日本選手権について。

現状では AJOCC が開催している JCX シリーズが JCF 全日本の予選になっています。

もし全日本の予選に JCF 未登録者が出走していたら、AJOCC としても JCF としても色々面倒ですし、JCF として「全日本出走の権利を与えているのだから、対象者は JCF 登録させて」というのもうなずけます。

C2, CM1 には少し当てはまりませんがレベルとして初心者ではなく「競技者」であることは確実で、JCF の主題としても登録はしてほしいのでしょう。

JCF

なぜそんなに登録者を増やしたいか。

登録料がほしいのか?と思って JCF の報告書関連ページの平成28年度 収支予算書 損益計算ベースを見てみましたが、JCF ライセンスによる収益(*1)は

  • 選手登録:3,001万円
  • 審判登録:543万円
  • アテンダント登録:500万円

合計4,040万円ぐらいです。1万人ちょいぐらい?しかし、実は収益全体では8億1272万円(*2)で、割合としては5%に満たない程度なのです。手間としてはマイナスぐらいな規模という印象。

どちらかというと UCI や IOC に対して「うちの登録者が xxx 人になりました!どうです?スゴイでしょ」と言いたいのかなぁ、とか想像します。「自転車競技を統括する」というお題目という観点からも数字は欲しいのでしょう。

*1:経常収益→受取会費→競技者登録料受取会費など

*2: ちなみに収益の90%近くが補助金。余談ですが、JOC からの交付金はたったの20万円。

まとめ

ここまで JCF を擁護しているような論調になってしまいましが、2016 JapanCup 女子レースの審判問題などもあったり、いまだに JCF ライセンスあるだけでは UCI レースに出られない(外国では出られるそうだ)などの問題点もあったりで、どちらかというと個人的には JCF にはあまり良い印象がありません。

しかしキライだ、といっても首のすげ替えができるわけではありません。

ここまでで見てきたように、組織として UCI の認可を受け、IOC, JOC の認定を受け、補助金をガッツリ受け取る大きな組織であり、これに取って代わるというのは現実的に不可能です。

ならば仲良くやっていきましょう。JCF ライセンスだって何万円も取られるわけでもないし、賠償責任保険もついています。それより何より JCF が日本国内の標準ルールを決めてくれている状態なのです。それが無くなったら困りますよね?AJOCC としても UCI レースなど JCF の協力無しには魅力的なレースは行なえませんし。

ハイ。

以上、UCI とは JCF とは何ぞやというところを見てみました。いろいろ書きすぎてしまった感が強いですが、まとめ。

  • UCI が競技ルールを作ってる。
  • JCF は UCI の出先機関であり、五輪や世界戦へ通じている。
  • JCF が全日本も主催してるし、その他国内の競技ルールを管理している。

JCF もアナウンス不足でわかりづらい組織ですが、裏方として色々とやってくれている団体であるようです。無くてはならない組織ですので、頑張ってほしいですね。

以上、オリンピックから AJOCC まで、でした〜。