月別アーカイブ: 2017年3月

UCI と JCF と5つの輪っか(3)

前回に引き続き、自転車連盟などの組織について見ていきましょう。

ASO

と、その前に寄り道をしましょう。世界最大の、といっても良いツールドフランスを主催する ASO (Amaury Sport Organisation) について。ほとんど Wikipedia のまとめですが。

まずは概要。

  • Amaury(アモリ)は人の名前
  • そもそもツールを創設したのはスポーツ新聞社レキップ
  • レキップ新聞紙の色が黄色→マイヨジョーヌが黄色に
  • 1992年新聞社レキップはツール主催権を譲渡
  • 新聞レキップは現在は ASO の傘下
  • ASO はパリ〜ルーベ、パリ〜ニース、フレシュ・ワロンヌなども主催。
  • ダカールラリー、パリマラソンも主催

さて、前回、前々回から考えると IOC→UCI→JCF→,,, と上限関係が成り立っているように見えますが、ASO はここからは少し外れています。

そもそもツールドフランスは五輪より(一般的な認識として)格が上ですし、UCI の世界戦のアルカンシェルよりも上でしょう。よって ASO は UCI にヘコヘコして UCI に認定してもらって、UCI カレンダーに入れてもらう必要はまったく無いのです。

しかし世界の自転車競技を代表しようとする UCI としては気に食わないところ。以下時系列でどうぞ。

  • — 2005年 —
  • UCI「UCI ワールドカップやめてプロツアーを制定しました。」
  •   「プロツアーに出られるのは UCI 認定出場ライセンス持ったチームのみね。」
  • 当然 ASO 主催のツールやパリニースはプロツアー対象レース。
  • ASO(はぁ?招待チームは自分で選びたいんだけど,,,)
  • — 2007年 —
  • ASO「そのチームはライセンス持ってるけどパリニースに出場させないから」
  • UCI「え,,,」
  • ASO「ツールにプロツアー以外のチームもワイルドカードで出しまーす」
  •   「それから、来年からうち主催のレースはプロツアーから撤退するわ」
  • ジロ&ブエルタ「俺も俺も」
  • UCI「ぐぬぬ,,,」
  • — 2008年 —
  • UCI「じゃ、じゃあツールは新しく作った UCI ワールドツアーに入れるから」
  • ASO, ジロ, ブエルタ「はぁ?もういいから。新制度でやろうや。」
  • UCI「は、はい,,,」
  •   「で、でもでも、ツールには UCI プロツアーの全チームを出してね。」
  • ASO「はあ(怒)?!」
  •   「ツールにプロツアーのアスタナは招待しない。ドーピング多いし。」
  •   「ところでさ、パリニースがプロツアーより格下ってどういうこと?」
  •   「2008パリニースは UCI とか要らんから。仏競技連盟の主催でやるわ。」
  • UCI「パリニースに出た選手・チームに制裁を課すぞコラ」
  • ドンパチ、バチバチ。
  • IPCT(*1)「まあまあ、参加チームの投票で決めようや。」→ASO 勝利。
  • UCI「仏競技連盟に制裁10,000スイスフランだ!」
  • 仏連盟「あっそ。来年からもウチがパリニース主催するから。」
  • コフィディス「来年は UCI プロツアー登録とかもういいや」
  • 他全チーム「俺も俺も。ライセンス料高いし、大したレースないやん。」
  • UCI「ヨーロッパ競技連盟は支持してくれてるし、プロツアー継続しようよ(泣」
  • 2008/8 IOC の仲介により和解(?)
  • 2009,10 UCI, ASO, ジロ・ブエルタ主催者による UCI ワールドカレンダー開催
  • 2011 UCI ワールドツアー創設(= UCI プロツアー消滅)

*1: IPCT = 国際プロ自転車チーム連盟

というわけで、現在は UCI ワールド・ツアーという形で運営がなされています。

だがしかし。

結局 UCI ワールドチームというライセンスを持ったチームが優先的にワールド・ツアーシリーズ(グランツール含む)に出場できるのは変わりません。プロフェッショナルコンチネンタルチームであれば招待でも出られますが、数は少なめ。

これは ASO にとっては大会出場チームを選ぶ自由度が減るわけで、2017年は ASO は主催イベントは「ワールド・ツアーじゃなくていいや」と発表。チームにとっては、苦労して UCI ワールドチームライセンス取得したのにツールに出られないかもという罠。

後続のニュースが見つけられなかった(←調べるの疲れた)のですが、2017 World Tour のレースを見るとパリニースもツール・ド・フランスも入っているので、落ち着いたのでしょう。

金銭的な問題もありますが、まあ要するに主導権争いをしているわけです。

ASO が UCI、ひいてはオリンピックに対抗できるようなコンテンツを持っているというのがポイント。ASO としては五輪や世界選手権なんてカンケーねえから邪魔すんなよ、というのが本音でしょう。建前としては世界で手を取り合ってみんなで頑張りましょう、というのはあるかもしれませんが。

逆にそういったコンテンツを持っていなければ、おのずと上位組織に従属するような形を強いられる可能性は非常に高いわけです。例えば JCF はオリンピックに日本人を出させたいでしょうから仏競技連盟のように UCI 逆らうことなんて絶対にできないでしょう。

また、UCI も世界選手権という大きなコンテンツを持っており、ぶっちゃけアルカンシェルの方が五輪金メダルよりもステータスは上。そうなると UCI としては IOC にヘコヘコする必要ないのかもしれません。IOC としても UCI の協力がなければ五輪の予選もできないわけですし。

いやしかし、調べてみてやっと UCI xxx ツアーについて理解。政治ですねぇ。

AJOCC

さて、やっと AJOCC 登場です。正式名称は「日本シクロクロス競技主催者協会」。一般社団法人。

ちなみに JCF は公益財団法人。簡単に言うと、一般社団法人は個人が集まって頑張りましょう、という団体。公益財団法人は基金を使って広く公益のために働きましょうという感じ。

AJOCC の About ページの(目的)は以下のようになっています。

この法人は、公益財団法人日本自転車競技連盟の競技規則に従いシクロクロス競技を実施する大会主催者を統轄し代表する団体として、シクロクロス競技の普及振興と、シクロクロス競技者の心身の健全な発達に寄与することを目的とする。

一言で言ってしまえば「オーガナイザーの集合体」。JCX レースを運営したり、オーガナイザー間でのシクロクロスについての情報共有や議論といった活動が中心となっています。ちなみに個人のみならず、都道府県車連の関係者も加盟しています。

さて、JCF との関係。

例えば全日本選手権の主催は JCF ですが、実際のレース開催地の選定などについては AJOCC 内で議論されているようで、ほぼそのまま JCF を通して発表されます。運営の大部分も個別のオーガナイザがやっている印象。

また、全日本の男子エリート・U23 の出場資格は JCF のナショナルランキングによって制限されますが、これはほぼ AJOCC のトップシリーズである JCX シリーズとイコールです(*2)。

JCX シリーズのレース開催については JCF は直接は関わってはおらず、言うなれば JCF が AJOCC に全日本予選を委託している状態です。ちょっと違った見方をすると「全日本への出場資格を得られるというオプションを AJOCC レースに与えている」でしょうか。

それから、これは JCF の本来の業務ですが、UCI レースの監督や審判団の派遣などを行なっています。これも JCF の協力がなければできないことですね。

さて、ここまでをざっとまとめてみましょう。全部網羅したわけではありませんが、関係性が離れている大会も追加してみました。そういえば世界戦の出場権も JCF が対象になっていますね。

IOC から AJOCC まで。

まあ大体こんなところでしょうかね。JBCF, 県車連は JCF に加盟しているけど内部組織ではないので、前回のよりもこっちの方が正しいかな?

次回は最終回。AJOCC でも一部のカテゴリーで取得が義務化されている JCF ライセンスについて考えてみましょう。

*2: 2015-16 は JCX シリーズのレースに加え、GPMistral のレースが加えられていた。

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UCI と JCF と5つの輪っか(2)

前回に引き続き、自転車競技に関わる組織のお話。今回は UCI の下部組織である JCF について。

国内自転車競技連盟 (National Federation, NF)

UCI とはなんぞやと言うと、定款の一番最初に

国際自転車競技連合(略称 UCI)は,各国の国内自転車競技連盟の連合組織である。

とあります。すなわち各国の国内連盟の上に立つ組織なのではなく、あくまで連合体と定義されています。Wikipedia の UCI の項にも最初は5カ国の競技連盟によって設立された、とあります。

ここにある国内自転車競技連盟(国内連盟)とは要するに JCF やアメリカサイクリング協会 USAC などのこと。

前回の五輪の話とからめると、

  • オリンピック委員会は自転車部門を UCI に委託。
  • だが、UCI 単独で世界各地で予選をやって、というのは無理がある。
  • ルールを定め、各地域の団体(JCF, USAC など)に競技開催をさせる。
  • その競技結果を集計して五輪参加割当を決定。

という形での運営になっています。

シクロクロスでは五輪がありませんが、ロードならば五輪の各国ごと出走人数の決定の仕組みについてはこの辺の冒頭が詳しいですが、つまりは UCI ポイントでの振り分け。ポイントが個人ではなく国ごとで合計され、その国ごとポイントにより参加可能人数が決まります(*1)。

で、参加選手数が「国ごとに与えられる」とありますが、実際は JCF に対して与えられています。そういえば日本選手団は JCF の定めた白ベースのナショナルジャージで参加していますね。

そして大前提として、オリンピックに選手を参加させたいのであれば JCF は UCI に加盟していなければなりません。(これだけではありませんが、話をシンプルにしてます。)

当然、JCF としてはオリンピックに自国民を出場させたい。であれば UCI に加盟。加盟すると UCI 規則を遵守する義務など発生しますが、対価としてオリンピックや世界選手権へ選手派遣する道が開けることになります。

もちろん JCF が選考を行いますので、選手が五輪に出場したかったら、UCI の窓口である JCF に登録しなければ選考対象とはなりません。UCI の競技規則にも五輪への出場資格の前提として国内ライセンスをもっていること、と規定されています(競技規則11.1.003)。

また、選手が国際的なレース = UCI レースに参加しようと思ったら UCI 登録をしなければ受け入れてもらえません。

考えてみましょう。レース主催者としては外国からふらっとやってきてレースに出させろ!というどこの馬の骨ともわからない選手をレースに出場させることなんてできませんよね。ルール破ったり危険行為をしたりするかもしれませんし、それに対する罰則を適用することができません。

しかし UCI ライセンスを持っていれば、その選手は UCI の定めたルールを理解し遵守することになっていて、かつ罰則も適用できますので、じゃあ出場 OK とできるわけです。

UCI ライセンスは UCI の日本窓口である JCF に申請して取得することになります(*2)。

*1: 個人で頑張ってポイント稼いだのに団体で評価されるってどうなのよ、というところでロード女子は色々あったようですが、以下略。

*2: ちなみに JCF が怠けて UCI ライセンスの発行が遅くなったりしたら UCI から直接取得する、という手順も定義されています(規則1.1.014)。

JCF(日本自転車競技連盟)

日本の国内競技連盟はご存知 JCF。規則集を読んでいくと、JCF の概要はざっくり以下のとおり。

  • 国内の競技者を管理・統括するという役割・目的を持つ。
  • 登録選手の成績管理などを行なう(ここから五輪選出)。
  • UCI の窓口として業務を行う。
  • 全日本選手権を行なう。

上の項の UCI ライセンスと同じく、競技ルールを遵守させる(=どこの馬の骨な選手に対する信頼付け)という役割もあります。3,4千円程度なのでケチらず登録しましょう。

UCI の窓口業務ですが、例えば審判講習を行なっているのは JCF ですね。また、UCI レースを開催しようとしたら国内連盟 JCF の承認がなければいけません。確か UCI 審判は JCF 所属が多いはずなので、審判の派遣についても JCF にお願いしなければいけないでしょう。(ちょっとこの辺怪しい…)

「JCF は UCI の下部組織なのだから、JCF ライセンスで全ての UCI レース出られるようにならないの?」

という疑問もありますが、JCF 登録人数は少なく見積もっても UCI 登録日本人選手の20倍。流石に UCI レースに出ないような選手データの管理を UCI に押し付けるのは無理ってもんです(*3)。登録の手間もありますしね。JCF ローテクだったし。

それから IOC の規定に、NOC(日本で言う JOC)は UCI の各国連盟である JCF をメンバーとして含まなければならない、という規定もあります(オリンピック憲章28.1.2)。

*3: ただ、UCI としては個別の ID を付与して全世界的に選手管理するシステムを駆動し始めた模様。詳細後日。

都道府県車連

JCF は以下の加盟団体を持っています。

  • 都道府県競技連盟
  • 全日本実業団自転車連盟(JBCF)
  • 日本学生自転車競技連盟
  • 全国高体連自転車競技専門部
  • 日本プロフェッショナル サイクリスト協会

ロードについていうと、UCI レースに加えて、基本的にはこれらの団体が執り行うレースの多くが全日本選手権の予選となっている場合が多いようです。国体なんかも結局は都道府県連盟主催の予選→国体→完走すれば全日本出場資格となってますし。どちらにせよ JCF のお墨付きがついたレースが対象となっています。2days 木祖村は実績が認められたのかな?MTB 全日本出場資格は JCF 公認の Coupe du Japon MTB の登録クラスによる。

昔聞いたところでは JCF の理想としては都道府県車連での予選→全日本選手権、としたいらしいです。実際には JCF+県車連だけでは総合的に正しい選考はできませんので、外部の主催者と連携しながらとなっていますが。

まとめ

はい、文字ばっかで疲れますね。書いている方も疲れました。

ここまでの関係性をまとめてみましょう。

IOC. UCI, JOC,  JCF(※厳密には JBCF は JCF の中では無いと思いますが。)

要素が多くて文章ダラダラになってしまいましたが、JCF を3行でまとめると、

  • UCI の日本窓口
  • 日本の競技者を取りまとめて五輪・世界戦に選出+派遣
  • 全日本選手権もやってるよ

ってところでしょうか。

さて、次回はやっと AJOCC 登場です。

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JCF と UCI と5つの輪っか(1)

今回は自転車競技界の UCI や JCF などの組織について見てみましょう。ロード、MTB、BMX、トラック競技でも基本は同じ形になってるはず。

最初にお断りしておきますが、今回のお話については、本文全ての文末に「と思う。」というワードを付けてお読み下さい。9割ぐらいあってると思いますが、根拠となる文章や規定を完全に調べきったわけではないので。まあ、いつも通り話半分ということで。

シクロクロスなブログなので AJOCC はね、という話をしたいのですが、まずはオリンピックからスタートしましょう。理由は読んでいけば何となくわかるでしょう。

IOC(国際オリンピック委員会)

さて、IOC https://www.olympic.org/the-ioc とはどんな組織でしょう。これは簡単、名前の通りオリンピックを開催する組織ですね。

しかし、IOC がボクシング、サッカー、自転車、スケートの予選大会を世界各地で直接に開いて選手選考をしているわけではありません。それは手間として無理です。実際にはスケートならばスケートの国際連盟が、自転車ならば UCI が予選となるべき選考基準を決めてレースやゲームを開催し、オリンピックへの出場可否を決定しています。

スポーツ競技ごとの組織を国際競技連盟 (IF) と呼びます。Wikipedia の一覧を見ると結構あって、ボディビル、ブーメラン、日本拳法になわとびも。連珠ってなんですかね?

しかし御存知の通りオリンピックにブーメラン競技はありません。これは IOC がブーメランをオリンピック競技として認めていないからです。

開催種目は IOC が定めるオリンピック憲章の規則45付属細則1.3.1と1.4.1に定められています。競技を指定するのではなく、IF の指定というかたち。もちろんここに UCI が含まれています。

でもって、各 IF としては当然「うちの競技をオリンピックで開催してもらいたい」ですよね?それには、まずは IOC 公認 IF として認めてもらって(*1)、あわよくばオリンピック開催種目に!とがんばるわけです。結局はそのスポーツがどれだけメジャーか、という点が大きな判断基準になるのでしょうけど。

*1: IOC承認国際競技団体連合 (ARISF) という団体もあるが、加盟団体を見ると「どうせオリンピックでは開催されないのさ」という競技団体の集合っぽい(Wikipedia 参照)。IF として公認をうけるだけでは駄目なのさ。

UCI(国際自転車競技連合

上に少し書きましたが、UCI はオリンピック憲章でもって五輪競技開催 IF として指定されています。つまり、「君らに自転車競技はまかせるよ」というわけです。

オリンピックにおいては UCI が定めた規則に則って競技が行われます。例えば自転車のハンドルの突き出し、タイヤサイズなどの用具の規定や、斜行したら失格とかの競技ルールについても IOC ではなく UCI が決めることになります。

もちろん好き勝手にというわけではなく、国際的に競技を代表する組織として公正なルールを定めたり、それをもとにきちんと運営しなければいけません。

それはそれで大変ですが、その変わりに IOC からはその競技の国際的取りまとめ組織としてお墨付きがもらえます。かつ、競技ごとにオリンピックへの参加人数が決められ、その選考方法は IF、つまり UCI が決めることになります。

NOC(National Olympic Committees), JOC

ちょっと待て。JOC、日本オリンピック委員会という組織があるはずだ。JOC って IOC の下部組織だよね?

そうです。が、IF とは役割が違います。

NOC は National Olympic Committee = 国内オリンピック委員会の略であり、JOC は日本における NOC。国内オリンピック委員会は申請書を IOC に提出し、認可されることによりその国の NOC として認定されます。

NOC は「オリンピック競技大会の開催立候補に関して意見を述べる」などの権利を持っていたりしますが、中心となる使命は

オリンピック憲章に則り、 自国においてオリンピック・ムーブメントを発展させ、 奨励し、 保護することにある。

だそうです。NOC の任務(←って書いてあった@JOC)はオリンピック憲章の第4章規則27、 28付属細則の4にあります。

  • その国の選手団を編成し、組織し、率いる。
  • 選手団に用具、輸送手段、宿泊場所を用意する。選手の保険もカバー。
  • オリンピック用の各国ユニフォームについて独占的権限をもつ。
  • IOC に協力する。

基本的にはこの4つ程度のお仕事しかありません。つまるところ自分の国の出場選手をまとめて管理しましょう、といったところがメイン。各競技に細かく口出しするわけではなく、IF とは縄張りが全く異なります。

あとはオリンピックに選手を派遣する義務があったり、オリンピック開催に立候補する自国の都市を選ぶ権限があったりします。ちなみに基本的には非営利団体。

とりあえずまとめ

長くなってきたのでここらで一旦休憩。ここまでのところを図に書いてみましょう。

IOC, UCI, JOC

UCI も JOC も IOC による認定により権威付けがなされています。逆にこのお墨付きがないと、JOC ならば選手団が派遣できないことにもなりますので、必死に IOC の決め事を遵守する事になります。

ただ、UCI も各国の NOC が減れば参加国が少なくなり、各競技の IF が無ければその競技自体ができませんので、その辺は持ちつ持たれつでしょう。

さて、次回は UCI の下、つまりは JCF について見ていきましょう。

編集後記:ざっくりしか読んでませんがオリンピック憲章、面白かったです。普段はオリンピックオリンピックと騒ぎますが、実際の組織や理念を抑えておくとまた違った視点が増えるかもしれませんね。オススメ。

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2017 JCF 登録

JCF の登録方法がオンラインでできるようになりました。今までは県車連の紙手続きをしなければ通らなくて面倒だったのですが、さてどうなったんでしょうね。前とこれからを比べながら、その詳細に迫ってみましょう。

昔むかし

その前にちょっと昔話を。

ある選手がロードの全日本 TT に申込んだのですが、その申込は JCF の地域の下部組織である都道府県自転車競技連盟宛てになります。そして JCF の大会要項には「いついつまでに県車連からの申込がなされること」とあります。

県車連に申し込み、練習に励んでいましたが、1本の電話があり「JCF への申込が間に合わなかった」とのこと。え?

「なんとかなりませんか?」
「いや、本当に申しわけないが無理です。」
「うーん…」

同じことになってしまった別の選手からも激しい抗議があったようですが、無理なもんは無理で通らず。県車連と JCF って一心同体だと思っていましたが。というより、何て融通の効かないことだ。

選手はがっかりしました。

しかしそもそも県車連が出先機関になっている形がよくわからない。結局 JCF が書類まとめているんだよね?全日本に申込忘れとかどうするのだ。そもそも JCF だって県車連に申込の有無ぐらい確認したら?

こんなことが2度とあってはならない。未来の選手のためにも、頑張って要点と意見をまとめ、メールを JCF に送りました。

しかし JCF からは返答はなし。

選手はもっとガッカリしましたとさ。おしまい。

これまでの問題点

その後、選手やチームごとに JCF に直接メールを送っておいてとか Cc で確認するとか一応チェック手順が追加されましたが不完全感は拭えず。大きな組織なんだからもう少しどうにかすればいいのに、と思っていました。

大きな問題点は1つ、

「なぜ JCF が都道府県車連を経由して手続きしなければいけないのか」

でした。

手順が複数になればその分ミスが発生するし、上の昔話のように JCF が下部組織のミスについては受け付けないというのもおかしい。

もちろん歴史的な理由などあるのでしょうが、選手としてはよくわからないし面倒くさい。少なくとも時代遅れ。

そんなモヤモヤが(個人的には)10年以上前からあったわけですが、それが今回やっとこさ改善されたわけです。

New System!

というわけで新しいシステムの登場。http://jcf.or.jp/?page_id=53792。選手登録の要点を並べてみましょう。

  • オンラインで JCF 登録できるようになった。
  • 決済もオンラインで(カード or コンビニ払い)。
  • JCF レース申込もできるみたい。
  • 登録はとりあえず継続登録にのみ対応。
  • 継続の申込は2月1日12:00 〜 3月30日15:00。
  • 県車連への書類提出でも登録できる。
  • 新規・再登録は4/1〜。
  • ライセンス期間が4/1〜3/31だったのが1/1〜12-31に変更。
  • ライセンスが紙から樹脂製に。
  • 国内ライセンス持っていれば国内の国際大会(UCI レース)に出場できる。
  • ただしライセンスに顔写真がはってあること。

新システム使用量(決済手数料?)はかかるようですが、オンラインで完結するのはうれしいですね。

実際に新システムのトップページに行くと、赤文字で注意事項がびっしり…。補足しておくと文章中の「所属団体」とは都道府県車連のことです。

上の国際レースの絡みでいくと、本人の顔写真の項目が気になります。

  • 登録申込後、1時間以内にメールで写真を送ればライセンスに写真が付く。
  • 写真データは 700kb 以下の jpeg ファイルであること。
  • 2.4cm x 3.0cm のカラー写真であること。
  • ファイル名は指定どおり付けること
  • 画像サイズとか間違ってたら無効なのでよろしく。

最初と最後の項目はなんだかなあと思います。送られてきたライセンスに写真が無くて、とかどうするのだろう。システム屋的な視点としては×です。

それから JCF レースの申込状況とかはライセンス番号と電話番号を入力すると見られるという仕組み。電話番号知っていたら他人でも閲覧できてしまうようですが、どうせ出走リストなどで公開されるものだし、まあいいのか。チーム監督などが見るには便利です。

写真の画像サイズ

で、700kb で 2.4×3.0cm ってなんやねん。

手元のマシン (Mac) のプレビューというソフトでやってみると2.4×3.0cm/解像度72とするとファイルサイズは5kb。これは68×85ピクセルなので、小さい写真とはいえ粗い写真になってしまうのでは?

この辺のページによると解像度は300dpiを超えても意味ないらしいので、2.4×3.0cm/解像度300とすると283×354ピクセルでサイズは55kb。このぐらいで安心?

限界まで画質上げてみた。※多分迷惑なのでやめましょう。

700kbというサイズはよっぽど変なことしなければ超えないですな。

シクロクロスな視点

国内ライセンス(写真付き)で UCI レースにでられるようになったのは大きいですね。

大きな視点からは、今までは UCI ライセンス取得の1万円がハードルとなって躊躇する選手もいましたが、それがなくなると UCI レースに参加する人数が増えることが予想されます。若干増か大きく増えるかは読めませんが、逆に言うと当然1万円払ってでも出る!というぐらいの熱い気持ちがなければ、あっという間にラップアウトされてオシマイになりますよ、と言っておきましょう(←偉そう)。

ただし海外 UCI に出るのならば1万円の UCI ライセンスが必要です。日本人が出場しそうなところを並べてみると以下。

  • 中国 Qiansen Trophy
  • アメリカ Vegas クロス
  • 世界選手権(JCF ナショナルチーム)
  • ↑の前段階の World Cup などのレース
  • その他武者修行でのレース

それほど多くはありませんね。

さて、もう1つ。まず C1, C2, CL1, CJ については JCF ライセンス所持が義務付けられていますが、

シクロクロスのシーズン:おおよそ9月〜翌年3月
JCF ライセンス有効期限:1/1〜12/31

と、シーズンが年をまたいでます。なので12月以前に C1 に所属する選手であれば翌年のライセンスも必要となります。シクロクロス的には年度単位になっている方が都合が良かったのですが、ロード+MTB の方が断然競技人口が多いので敵いませんね。そもそも UCI ライセンスが 1/1-12/31 ですし(競技規則1.1.008)。

まあ、ライセンス義務カテゴリーの選手なら来シーズンは出ない、ということは少ないでしょう。細かいこと言わずにライセンス取りましょう(というか取らないと出られません。)

まとめ

最近になって「やっとライセンス届いたぜ。」というコメントが聞こえてきました。見切り発車という批判もありましたが、新しい仕組みの始まりなんてこんなもんでしょう。長い目で見ると大きな改善だと評価できると思います。JCF には引き続き頑張って欲しいですね。

ちなみに、われらが AJOCC ではライセンスという形はなく、AJOCC レースに参加すると自動的に選手登録されるようになっています。ライセンス料もなければライセンスカードの発行もなし。かなりゆるい形での管理となっています。選手としては選手コードさえ抑えておけばいいので手間としては楽。

で、色々考えてみると、そもそも JCF 登録=競技者登録って何様?という疑問があります。

JCF は AJOCC とは別団体のはず。俺はシクロクロス走りたいだけなんだけど、ナゼ JCF のライセンスをお金払って取得しなければいけないの?競技者登録する意味は?JCF って何やってるんだっけ?

スケールの大きな話なので長くなりそうですが次回乞うご期待〜、ということで。

残留する?しない?

来週末3/12で今シーズンの AJOCC レースは終了ですが、この時期はカテゴリー残留できるかどうかが気になるところ。今回はその基準の細かいところについて確認してみましょう。

(内容については確認取ったのでほぼ公式情報。)

まず、降格が発生するのは以下のカテゴリー

  • C1, C2, C3
  • CM1, CM2

そのシーズンに昇格した選手は降格対象となりません。CM4 は自由参加型カテゴリーなので CM3 からの降格なし。女子 CL も降格は無し。

AJOCC のルールページには以下のように記載があります。

以下の残留基準を満たさない者はシーズン終了後に降格となる。
・出走人数を基準にして1/4(25%)以内の順位 1回以上の実績を残した者
・出走人数を基準にして2/3(66%)以内の順位 3回以上の実績を残した者

うーん、ちょっとわかりにくいかな?残留チケットという概念で考えてみましょう。

  • 例えば40人出走のレースで
  • 10位以下ならば25%以内 → 残留チケットを3枚をゲット
  • 26位 (=65%) 以内 → チケット1枚獲得
  • 同様にして、シーズン終了時までにチケットを3枚以上集められなかったら下のカテゴリーに降格!

カテゴリー複合型の C3+4 のレースについては C3 所属の選手は C3 残留チケットが、C4 所属の選手は C4 カテゴリーの残留チケットが与えられます。

%な値は一般には「順位パーセント」と呼ばれており、算出方法は以下の通り。

順位% = 順位 / 出走人数 x 100
※ 小数点は切り捨て

はい、ここテストに出ますよ〜。「小数点切り捨て」です。

例えば103人出走のレースで、69位ならば69/103×100=66.99029,,, となります(*1)。

「2/3の順位」という基準では2/3×100=66.666,,,<66.99029,,, なので 2/3 という基準を満たしていないように見えてしまいます。しかし小数点切り捨てなので順位%は66となり、無事に残留切符1枚ゲットだぜ、ということになります。

小数点は切り捨て!

25%の計算についても同様に小数点切り捨て値で判断されます。というか25%基準で走っている選手なら十中八九もう大丈夫なところに居るでしょうけど、ね。

以上、残留の基準詳細でした。

残留かかっている選手は週末ガンバれ〜!

*1: ちなみに出走人数が103人より少ない場合には、順位/出走人数x100が66.66,,,<x<67.0となる順位xは存在しない。