月別アーカイブ: 2017年2月

15-16レースいくつ出た?(2)

前回投稿に続き、15-16 のレース出場回数を見てみましょう。今回は Elite。

>>> 追記@2017/4/9
後で気付いたのですが、本記事のデータについては「シーズン中に1回もエントリーしていない選手」はカウントされていません。よって平均値などは「アクティブな選手だけでカウントしたデータ」になっていますのでご注意下さい。
<<< 追記ここまで

当然 C1 選手はポイント稼ぐためにもレース数は多いだろうし、このところ熾烈な競争になっている C2 も残留ポイント狙って出場数は多いと予想。C3, C4 はそこまでは執着無いかな?

では行ってみましょう。

Elite

まずは入り口クラスの Category4。入門クラスとしてもっとも多い選手を抱えているカテゴリー。

Category-4

きれいなカーブになっています。1078選手、平均は3.09レース。やっぱり3回以下のちょっとだけ参加が大半。それでも10回以上でてるぜ、という選手もちらほら。

Category-4(選手コード記号ごと/出場4回〜)

選手コードの頭3文字で分類。関西が飛び抜けて、と思ったらそうでもなく。東北も全体人数に比べると沢山遠征している選手居るみたいですね。

Category-3(選手コード記号ごと)

C3+4 というレース開催の形もありますが、C4 の右肩下がりに比べて C3 は平らなグラフ。276名の平均5.73回。ちょっとしか出ない人もいれば、ガンガン遠征している選手も。12レースは不吉な数字?

関西のシリーズエントリーの効能はあまり見られません。地域ごとの選手も均等に広がっているような印象。

Category-2(選手コード記号ごと)

出ました22レースはFUKADAまじりんぐのI選手。関西シリーズ全部?+東海, 信州遠征などとがっつり。

210名、出場平均は7.12回。

C2 にもなれば1,2回のみという選手は少数派。人によって違うが少なくても3回以上、というところ。しかし C3, Masters, CL と同じく7回出場という選手が多いのが不思議。精神的にちょうどいい回数?

Category-1(選手コード記号ごと)

さて Elite トップカテゴリーの C1。264名で平均8.59レース出場。さすがの数字。

トップ選手を確認してみましょう。スワコの帝王17回、BLITZEN の息子が16回、BOMA 丸山16回、弱虫ペダル前田16回、Anchor 沢田時12回、GIANT 門田10回、Shimano 横山6回、ヨーロッパ主戦場の Toyo 竹之内は4回のみ。他の競技やってる選手はちょい少なめですが、16回ならほぼ毎週レース。

しかし C1 なら20レース選手もっといるかと思ったけど意外とこんなもんか〜(ちょっと残念)。15レース出ている選手は多いけど。

全体を眺めると、C2 と同じく少なくとも3回以上の選手が主体。地域割合としては信州が非常に目立ちます。関西ほどの大会人数の規模はありませんが、昔からシクロクロスのさかんな地域で強豪選手を多数そろえており、シリーズも年間10戦ほどを開催しています。割合としては東北多め、新しめの東海はもう少し時間がかかる?

まとめ

最後にカテゴリーごとにレース参加数の平均値を確認してみましょう。

15-16 カテゴリーごとレース出場回数平均

なんと僅差で CM1 がトップ!関西シリーズが熱狂的ですから。

個人的には CL1 が C1 より高いのが意外。C1 が、というよりも CL1 選手の方が本格的に取り組んでいる選手が割合的に多いのかな?(もしくは遠征好き。)

シーズン7レースならば1ヶ月に2回ぐらいはレースに出ていることになり、セカンドカテゴリーである C2, CM2 も元気ですね。

さて、ざっくりまとめ!

  • トップカテゴリー選手は少なくとも月に2レース
  • 入門クラスでは月に1回ぐらいのペースで出場
  • 20レース以上出た 数寄者 強者は2名のみ
  • セカンドカテゴリー以下ではなぜか7レース出場が多い(平均も7程度)

というところでした。

レースに沢山でれば良いというものではありませんが、いや、えーっと、強くなりたいならレース経験は多ければ多いのは確かですよ!

強くなる云々は置いておいても、確かに遠征は大変ですがいつもと違うコース、違ったメンバーで競うのは楽しいものです。遠征なりのイベントやトラブルもまた良し。是非いろいろなレースにチャレンジして世界を広げてみて下さい。

以上、15-16シーズンのレース出場回数でした!

15-16レースいくつ出た?(1)

>>> 追記@2017/4/9
後で気付いたのですが、本記事のデータについては「シーズン中に1回もエントリーしていない選手」はカウントされていません。よって平均値などは「アクティブな選手だけでカウントしたデータ」になっていますのでご注意下さい。
<<< 追記ここまで

「今シーズンは20ぐらい出たかな〜。流石にシーズン途中で疲れたわ。」というエリート選手のコメントを聞いたりします。竹之内君なんかはヨーロッパで週1以上のペースでレースをこなしているそうですが、ここ日本でも大会が増えてきてレースには困りません。

確かにメインに出場するシリーズ6だとして、他のシリーズ3戦を3つ、でかい大会を3つ、イベントを2つで20に届きます。しかし実際のところ、選手はどれぐらいレースに出ているもんなんでしょうね。というわけでデータ編始まり始まり〜。

まだ16−17が終わっていないので今回は15-16のデータを使用します。JCX サイトや各地域からのデータを集めて集計。それ以外のレースは含めず。

レーススケジュール

9/12から3/27までの6ヶ月間には週末が29。そのうちレースが無い週末は4つ(9月3,4週、1月1週、3月2週)なので、全国飛び回れば25レースには出られます。秩父や野辺山などは2daysなので実際にはもう少し増えます。

しかし全国行脚は無理ですので、例えば関東でマックスに出る(東北、信州もカウント)とすると秩父x2、信州、宇都宮茨城,,, と3/27の茨城まで数えていくと27レース!こんなに出られるのか。

20レースなんて余裕?

実際のレース出場数

さてそれでは実際には1シーズンでどれぐらいレース出ているのでしょう。

全部カウントするのは辛いので、Elite, CL, Masters の選手だけカウントします。カテゴリー所属は15-16シーズン最後、つまり2016/3/31で判定。ジュニア選手は C2 所属していても CJ とか走っててそのレース数など含んでいるかも、ということで。ま、カテゴリー分類はおおよそってことで。

全日本選手権や年代別、関西の第7.5戦、Exhibition も含ませました。

まずはおっちゃんクラスから。

Masters

マスターズの一番下、CM3 から行ってみましょう(※本当の一番下は CM4)。450人、出場レース数の平均は4.02。

Category Masters-3

入り口のクラスということで1回だけ、というのが多め。選手の1/3を占めます。

選手コードの頭のアルファベットでも分けてみましょう(TMP- などの番外編コードな選手除く)。といっても CCM だからといって信州住まいとは限らないのですが、1つの指標として。ちなみに昔っからシリーズを開催している KNS と CCM の選手人数が多いです。

見にくいのでレース4以上のみ。

Category Masters-3(4レース以上/選手コード記号ごと)

やっぱりというか関西多いですね(えんじ色)。関西ではシリーズ10レースぐらいまとめてエントリーの仕組みがあります。もともと安いエントリー料がさらに低く、近い安い旨いの3拍子とくれば人数がおおいのにも納得。10レース以上出ている選手は割合としては少なめ。

まだエントリー的なカテゴリーなので熱狂的な数字では無いみたい。もちろん強い選手は上のカテゴリーに行ってしまうでしょうし。

Category Masters-2(選手コード記号ごと)

つづいて CM2 は132名、出場平均はぐっと増えて7.11レース。にしても相変わらず関西多いな〜。最近大規模に開催している東海の人数が目立ってきています。

CM3 と違って「1レースしか出ない」という選手はほぼ居らず。関西シリーズ全部出る、という選手が多そうな分布ですね。

Category Masters-1(選手コード記号ごと)

前2つのグラフと比べると、やっぱりトップカテゴリーは違いますね!106名の平均9.01レース。

相変わらず KNS が目立ちますが、関西シリーズ+他地域への遠征も、ということで1シーズン10レースは当たり前。逆に6レース以下しか出ない選手は少なめ。他地域の選手でも7レースは出るぜ、というのが固まっていますね。

女子 CL

続いて女子。CL3 から順に行ってみましょう。

CL3(選手コード記号ごと)

こちらも入門クラスというわけで1回のみの選手が多め。湘南 (SHN) が多目ですね。90名、平均2.27レース。

流石に4レース以上出ている選手は少なめですが、CL3 はレース時間が短く、ハマってきたらより長く苦し楽しめる CL2 に移行するからでしょう(昇格条件ないし)。

CL2(選手コード記号ごと)

JCF ライセンス無しで走れる CL2 は 125名、平均4.14レース。依然として1回だけ〜の参加者も多いですが、関西シリーズのおかげもあって10回近く走っている選手もちらほら。やっぱり7回が多いのが不思議。

水色が目立つことから幕張、お台場の人気が伺えます。

CL1(選手コード記号ごと)

さて、Women のトップカテゴリー CL1 は母数が少なく46名ですが、その平均は9.00。さすが〜。圧巻の18レース出場は Liv の武田選手。シクロクロス専門の選手として頑張っています。

全体的な分布としても1,2回のみという選手も多少居るものの、殆どの選手が10レースほど走っています。男子と異なり CL1 は比較的昇格条件がゆるく、逆にやる気のない選手は CL1 には上がってこないので当然といえば当然。しかしグラフの形がハッキリと分かれていて面白い。

それからこれまでの他のカテゴリーと比べると KNS な選手一辺倒では無いようです。

今日はここまで

さすがに20レースはありませんでした。

下位クラスはやはり参加回数が少ない選手が大半でしたが、CM1, CL1 ともにトップカテゴリーの選手は年間7〜12ほどのレースをこなしているようです。4ヶ月で12レースとすると、3レース/月。体力的なところを考えても妥当なところかな?

さて、次回は Elite とまとめを予定しています。C1 選手はどれぐらいレースをこなしているのか、20レース以上出ている猛者は果たして本当に居るのでしょうか???

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Americanカテゴリー事情

本ブログで何かと取り上げられるアメリカシクロクロス。ちょっと前に USA Cycling 協会(以下 USAC)の CX のページを見ていてカテゴリー昇格の面白い仕組みを知り、今回はそれも含めて USAC のカテゴリー制度を調べてみました。

USAC のページではログインの機能などもあり、選手ごとリザルトも閲覧でき、進んでいるなあと思ったりします(が、進んでいない部分も多数。トップページとか。)

では毎度適当和訳で行ってみましょう。

昇格ガイドライン

まずは元ネタになったページより。https://www.usacycling.org/news/user/story.php?id=2627

このページのトップ、目に痛い黄色ボックスの中に書いてありますが内容は以下。

  • カテゴリー昇格したかったら成績を添付して申請してくれ
  • 昇格 OK ならカテゴリーシール発行するのでライセンスに貼り付ける(ライセンス再発行しない場合)
  • 昇格 OK なら Web アカウントのカテゴリーも更新される
  • Category1 はライセンス再発行になる

自己申告だと?

昇格要件

シクロクロスのカテゴリーは男子も女子も Category1〜Category5 の5段階(USAC のルールブック第1章の項1D1(a))。女子は前までは Category4 までだったみたい。ちなみにロードもトラックも同様に Category1〜5 であり、統一された区分になっています。クロス選手がロード並みに人数いるってこと?

カテゴリーは5段階でかなり細分化されていますが、実際のレースは Category1/2 とか 1/2/3 で開かれたりしているようです。

昇格はポイント制で判断され、条件は以下の通り。(pt = point)

  • Category5→4: 10レース参加で強制昇格
  • Category4→3: 10pt で申告昇格/15pt もしくは 30人以上出走レース2勝で強制昇格(*)
  • Category3→2: 15pt で申告昇格/20pt もしくは 30人以上出走レース2勝で強制昇格(*)
  • Category2→1: 20pt で申告昇格/25pt もしくは 40人以上出走レース2勝で強制昇格(**)
  • (*: ただしジュニアは4→3, 3→2 の強制昇格対象外)
  • (**: weekly series のレース、マスターズレースで稼いだポイントのうち、Category1 への昇格に充てられるのは10ptまで。)

で、肝心のポイントテーブルは以下。

順位\出走5〜10人11〜20人21〜50人50人〜
1位3457
2位2345
3位1234
4位123
5位12
6位1

結構厳しいですね。もちろん昇格すればポイントはゼロにリセットされます(1E1(e)の項)。

例えば30人出走として、3→2 ならば1位+3位x3+5位。2→1 ならば1位+3位x3+5位x6。コンスタントに上位で走れないと昇格は無理。本当に強い選手は2勝しちゃうと思うけど。

ただし、申請前36ヶ月間のポイントをカウントできます(1E1(d)の項)。つまりは2シーズン。その間に上記の例ぐらいの成績を稼げば OK ということになります。それでも結構大変そうな感じはしますが。

降格条件

では逆に降格はどうなっているのでしょう。AJOCC ではシーズンの成績によって管理されていますが、ルールブックの1E6(e)の項に記載があり、

  • 降格したい選手は Web で申請してくれ
  • Category5 には降格できない
  • 昇格した年には降格しない

以上,,, って、これだけ?

「申請すれば降格」。逆に言えば申請しなければ降格なし、ってことですよね。一方通行階段。

まあ、昇格条件が結構厳しいので上位カテゴリーの人数がまだ少なく、降格の仕組みが必要ないのかもしれません。Category1/2 などの複合カテゴリーでの開催も多いそうですし。

他競技からの移行

ロードやマウンテンバイクで USA カテゴリーを持っている場合には、上位カテゴリーに入ることができます。例えば MTB XC の Cateogy1 だったら CX Category3、ロード Category4 だったら CX Category5、などなど。

ナショナル選手権の参加資格

先程、どんどんカテゴリーが上がっていくだけ、と書きましたが、全米選手権の出場資格も調べてみました。https://www.usacycling.org/2017/cxnationals

開催期間は2017/1/3(火)〜1/8(日)。Masters 男女全部、学生クラス、TEAM RELAY、Cross Country Marathon とかハテナな Non-Championship なレースも含めてガッツリ開催しています。Junior クラスも11-12, 13-14, 15-16 と徹底。勿論 Men, Women に分けての SingleSpeed もあり。ど、どんだけっすか!

で、本題の全米選手権 Elite の出場資格はテクニカルガイドに載っています。

  • USAC などの有効なライセンスを持っていること
  • ProCX ランキング90位以内であること
  • もしくは UCI ポイントを持っていること

ProCX というのは日本で言うところの JCX シリーズ。Category1 と 2 のレースが該当で、獲得大会数制限があるのも日本と同様。2017 Elite のエントリーは男子47名(C1/2)、女子38名(C1/2/3)というわけで、90人制限といっても全部が全部出場しているわけではないみたいですね。アメリカ広いし。

サンドバック野郎

この規則とか手順を読んだ時にふと思ったのが、「申請しなかったら昇格しない?」ってこと。

タイミングよく Twitter で @daisukeyanocx より

上がらず下のクラスで勝ち続ける「サンドバック野郎」と呼ばれる人がたくさんいます。

と教えてもらいました。日本語として聞くと、サンドバック=殴られる側、みたいな印象がありますが、殴る側ってことですよね?

サンドバック野郎

USAC は選手側に昇格条件のチェックをオマカセできて楽なんでしょうが、全米選手権のデータ見てもかなりの人数が居るみたいですし、全部はチェックしきれてないみたいですね。

まとめ

さあ、いかがでしたか?

所変わればなんとやら。降格もなければ昇格は自己申告。JCX と同じようなシリーズもありーの、全米選手権が6日間とスケールがでけーの。

色々面白かったので、また思いついたら USAC についても調べてみようっと。

以上、太平洋の向こうのシクロクロス事情でした!

UCI ルール Updated@2017/1/28

1月末に UCI のシクロクロスに関するルールに変更がありました。シクロクロスにも UCI 公認のチーム制度ができたようです。今回はその内容を見てみましょう。

元ネタ: 2017/02/05_Cyclo_Cross_170128.pdf
1つ前のルール: 2016/06/05_Cyclo_Cross_160607.pdf

相変わらず適当ざっくり和訳で、行ってみましょう。


ワードの変更

全体にところどころで

UCI individual cyclocross classification → UCI individual cyclocross ranking

というように、classification(等級分け、格付け)という言葉が ranking に変更されています。UCI 発表の「ランキングを」使いますよ、というのを明示する目的での変更だと思われます。

5.1.001 – UCI recognized teams(UCI 承認チーム)

以前からあった項目で「以下のチームの名前・ウェアでレース走って良いよ(ナショナルチームの服装縛りがある場合を除く)」という規則。これまでは UCI 登録のロード, MTB チームが認められていました。

今回はこれに「規則第V章によるUCI シクロクロス・チーム」が追加。これの詳しい内容は後述。書いてある順序はクロス→ロード→MTB なので、シクロクロスのチーム名・ウェアが優先するものだと思われます。

(ちなみに文章ニュアンスとしては、UCI チームに所属してないなら適当なウェアで走っても OK な感じです。勿論 UCI チームに所属したら統一のジャージでしょうが。)

5.1.060 Rider’s clothing – Order of priority
(選手の服装 – 着用の優先順位)

「全日本ジャージ持っていてもアルカンシェル持ってたらアルカンシェル着なさい」という規定。これが規則 1.3.071 に移動しました。1. から始まるのは自転車競技一般の規則。競技によらず着用順位を統一しましょう、という意図でしょう。

5.2.014

これは新しく追加された項目。内容は以下。

  • UCI シクロクロスのチームランキングを作成する
  • 対象となるのは第V章で規定するチーム
  • 各チームごとに「UCI 個人ランキングの男子最上位選手のポイント」と「同女子最上位選手のポイント」を合計してチームポイントとする
  • 同点となったら女子ランキングで決める

男子1名+女子1名のポイントでランキング。これって意味あるのだろうか、と思いましたが、最後の項目でちょっと納得。おそらくチームランキング作りつつの女子を盛り上げたい、ということかなと思います。

でもどれだけ注目されるかは微妙な気が…

5.3.023 Leader’s skinsuit(UCI ランキング首位者のウェア)

「UCI ランキング1位には UCI がワンピースあげるから、ワールドカップでは着なさい」というルール。でもアルカンシェルと比べるとどうしても見劣りするし、デザインも味気なくてイメージ薄いんですよね。

以前までは「チームの広告をつけていいよ」でしたが今回の改定では「UCI 公認チーム所属ならば、そのチームの広告を付けていいよ」になりました。

もしスポンサーが居るならチーム登録しないと、いざという時に広告貼れない!となってしまいます。ヨーロッパプロは積極的に UCI チーム登録することになるでしょう。

第V章 UCI CYCLOCROSS TEAM

さて、やっと今回の本題にやってきました。ロードなどでは以前から UCI プロとかコンチネンタル登録とか細かく規定されていますが、シクロクロスでは今回の改定でチーム規定がごそっと新規追加となりました。

言われてみればこれまで無かったですね。さて、どんな内容で、これによってどんな違いが生まれてくるのでしょうか。

いちいち訳していると日が暮れるので箇条書きでいってみましょう。

section1 Identity(規定)

  • 選手は19歳〜
  • 所属選手3名以上
  • 女子を1名以上含むこと
  • チームは男女で分けない
  • ロードや MTB の UCI チームに加入していても手続き踏めば所属 OK

やっぱり女子を盛り上げたいのかな?

  • 2者をメインパートナー(スポンサー)として指定できる
  • チーム名はメインパートナーの企業名・ブランド名でなければならない
  • 他と同じ名前のチーム名・パートナー名は駄目

第3スポンサーの名前やロゴは配置できません。スポンサーロゴだらけゴテゴテなウェアは美しくない!ってところでしょうか。

section2 は割愛。

section3 Registration(登録)

  • シーズンごとに UCI に登録を行なうこと
  • 登録が有効な期間は8/15〜翌年3/1である
  • チーム責任者・パートナーはシーズン通じて頑張ること

さらっと書いておりますが、ここ重要ですよ!

特に本場海外でという話ですが、今まではロードチームとの関連もあり、シーズンど真ん中の1月1日に選手の登録チームが切り替わる、ということがありました。

正月の悲劇

僕もそんなもんだと思ってましたが、よく考えるとスポンサーとしても大問題ですよね。例えば自分とこの選手がワールドカップで勝ちまくってて、このまま行けば総合首位間違い無しシメシメだと思ってても、1月に他のチーム行ってしまってあっという間にライバル、とか。

選手としてもスポンサーが変わってバイクも変わってしまう場合があります。ヨーロッパの年末年始はレース続きなのですが、昨日はコ◯ナゴ、明日はリ◯レーで勝てというのはそりゃ無理ってもんです。

そんないびつな状況が改善される一手になりそうですね。

  • 申請は7/31までに(ここまでに選手の UCI 登録も必要)
  • チーム登録料あるよ(毎年 UCI 理事会が決定)
  • 1月1日〜10日のどこかで1回だけウェアのデザインを変更できる

おっと、途中のデザイン変更は OK。確かにロードチームでは正月にスポンサー変わらずともジャージデザインを変えることがあるので、このためでしょう。

チーム登録でのメリットは以下。(※ワールドカップ = WC)

  • WC ランキング首位ジャージ上の広告(前述)
  • WC 発表のエントリーリストやリザルト上にチーム名表示
  • 世界戦、WC で「ピットエリア内チームマネージャーゾーン」への ID を2つ付与、駐車パスを2つ付与。
  • UCI からの直接メーリングリストへ登録
  • UCI ウェブサイト上でのチームデータ公表
  • UCI チームランキングの対象とする(前述)

ID のとこの和訳が怪しいですが、既存の「選手1名につき2名のメカニック」に加え、さらに監督2名がピットに入れるようになる、ということだと思います。Team manager zone ってなんやねん。

section4 Contract of employment(雇用契約)

まともな雇用契約しましょう、という内容。「移籍金制度は駄目よ」という項目があったりします。

section5, 6 は割愛。

巻末の付録部分にチーム契約書の例が載っています。JCF の訳ではシクロクロスのはずの箇所がマウンテンバイクになってたりしますが…


以上、ルールブックのまとめでした。

個人競技的側面の強いシクロクロスなので、さすがにロードのようにチームがプロだコンチネンタル登録だからどーのこーの、というような厳しいことはありませんでした。

また、チーム登録しなくてもワールドカップには出場できるので、一般の選手ではチーム登録するメリットは少な目。しかし逆に大きなスポンサーを抱えてトップ争いをするフィデアやナポレオンゲームスなどは必ずチーム登録をするでしょう。

あとは女子を男子に巻き込んで盛り上げたいみたいですが、どうなるでしょうねぇ。

一番大きなポイントは、やはりシーズン途中での移籍を防ぎ、選手や観客にとってもスポンサーにもわかりやすくすること。シーズン途中、しかも世界戦の4週間前にチーム変更ってどういうこと?!ってなりますよね。UCI としてもシクロクロスシーズンの一貫性を考えた上でのルール設定であり、当然っちゃあ当然の改定です。

チームランキングは個人的にはあんまりうまくいかない気がしますが、どうなるでしょうね。

以上、UCI ルールの変更について、でした!

80%ルールとUSA運用ガイドライン (3)

前回に続き、USAC が提示したレース運用のガイドライン。今回はレーススケジュールと時間調整についての提言を見てみましょう。

※ちなみに、80%ルールの話だけだと勘違いしてましたが、表題”CX Best Practices(For Race Director and Officials)”の通り、レース運用の全般についてのガイドラインになっていますね。

以下本文中の (*ホニャララ)は僕のコメント、ツッコミなど。


スケジュールと時間配分

レースの時間配分

運営が作ったスケジュールと選手の動きがマッチするためには、レースの時間をどう計算するかを考えることは重要だ。普通は第1周の、もしくは第1周と2周の平均タイムを使い、トップ選手のゴールがあらかじめ決められた規定時間程度になるように周回数を決定する。40〜45分を超えるレースなら、1,2周の平均タイムで決めるのが良いだろう。以下の項目にも注意。

  • コース距離と予想周回タイムは?
  • レース間隔(時間の差)はどれだけある?
  • トップ選手と最下位選手のラップタイムの差は?
  • レース中にラップタイムが激しく落ちる可能性がある?(削れたり崩れたりといったコンディションの変わるコースや天気)

例を挙げてみよう。

  • 9:00スタートのレース
  • レースの規定時間は40分
  • 先頭が7:00で走った→レースは6周回と決定される(42分になる)
  • しかし、周回遅れでない最後尾の選手が8:00+α/周で走ったとすると、レースは実際には42+8=50分となる。
  • もし、次のレースが9:45だとすると重なってしまう。

スケジューリングをするとき、以下のことを考えよう。

  • 前のレースが進行中に次のレースの選手を並ばせたいのならば、スタートエリアをコースとは分けるべきだ。(* スタートループをつくれ、ということ。)
  • レース先頭がゴールした後、最後尾の選手がラスト周回をこなすだけの十分な時間があるか?
  • 次の出走レースに対して、ウォームアップを考慮したコース試走がどれだけの時間設定されているのか。(*翻訳怪しいです)

レーススケジュール作成とカテゴリー

以下は経験のあるレースディレクターからの提言であり、スケジューリングに役立つであろう。

1. もし混走レースならば、能力・スピードの近いカテゴリーを一緒にすると良い。例えば、中高生ならマスターズと一緒でも良いかも。こうすることで、周回遅れがレース先頭にバッティングすることも減らせる。

2. 混走ならばゼッケンを認識しやすいように分けること。例えばマスターズ35+カテゴリーと55+カテゴリーを混走でやるならば、ゼッケン番号は301〜350と501〜550というように分けるのが良い。運営、選手、計測屋にとってもわかりやすい。カテゴリーごとに異なった色付けやスポンサーロゴなどがあるとさらに良い(とくに選手にとって)。また、一方のカテゴリーのゼッケンを昇順(101,102,103,,,)に、他方を降順(299, 298, 297,,,)で割り振ると良い。こうすると十の位が別々になり、リザルト集計もよりやりやすくなる。

(* 昇順降順のところがよくわからないが、おそらく、それぞれのカテゴリーが50人以下であればという条件で、百のケタだけでなく十のケタもカテゴリーによって異なる数字になるので、さらに見分けやすくなっていいよね!ということだと思われる。マニアックすぎる。)

3. 出走者のキャパシティをかんがえること。1つのコースに200人の選手をOKとすることは可能かもしれないが、選手にとってはあまり良くないだろう。出走人数を増やすために長い、もしくは速度の上がらないコースを作っても良いが、ピットの能力に大きく影響するだろうし、先頭がゴールしてから最後尾がゴールするまでかなりの時間がかかってしまうだろう。

4. 混走レースならば、第1グループ(*=早い方のグループ)の先頭がゴールしたら、それ以降の全ての選手をゴールとする方式は時間の節約になるが、それでも他のレース体験を損ねることはない。

(* たとえば C2 と CM1 が混走のレースをして、C2 の先頭が CM1 より先にゴールしたとしたら、それ以降にゴールラインを超えた CM1 選手もゴールとしてしまう、ということ。もちろん周回数が考慮されるので、C2 先頭ゴールの後にCM1選手1番にゴールライン超えたからと行って CM1 の1位になるわけではない。現実的に混走レースでカテゴリーごとにゴールタイミングを違うくするのは難しい。)

5. 混走同時スタートはまれに必要となる。しかし、同時スタートの数はなるべくすくなくするべきであり、時差スタートの場合の時差は小さい方が良い。第1出走グループの数分後に出走するなどとしたら、周回遅れによる影響が多数発生してしまう。例えば7分/周のコースで4グループが1分置きに出走するのであれば、最終グループは第1グループが半周したころにやっとスタートとなってしまう。

例: 以下の出走スケジュールがレース運営にどう影響するかを見てみよう。

状況: レースは Women1+2, Women3, Women4 のカテゴリーをこの順で約1分置きでスタート。先頭はレース時間40分で、ラップタイムは7分ぐらい。考えるべきことは、

  • Women4 は先頭から2分遅れでスタートとなり、周回遅れが多数発生するだろう。
  • もしレース全体の先頭を基準として80%ルール適用もしくは周回遅れ除外をおこなったら、Women3, Women4 の多くの選手が除外されてしまうだろう。
  • レースの先頭の選手は渋滞に巻き込まれるだろう。
  • 現実的に、審判も Women3, Women4 の先頭選手に影響しないように除外処理をすることは不可能だろう。
  • 明白に異なるゼッケンナンバーを用いるとリザルト集計が楽になる。例えば Women1+2=201から発番、Women3=301から発番、Women4=401から発番、とか。異なる色のスポンサーロゴだとなお良し。
  • レース先頭がゴールした後、最後尾がゴールするまでにどれだけ時間がかかるを知るためにも、最も遅いカテゴリーのラップタイムがどれぐらいになるかを知っておくことが必要。
  • 計測屋と審判の両方がレース終了後にカテゴリーごとの順位集計に時間をさかなければいけないだろう。人手が多く必要になるだろう。

このレースでは、先頭は6周を走る(6周x7分=42分)。もっとも遅い選手は1周8分以上かかるので、このレースが終わるまでにはおおよそ50分という時間がかかる。

このようにスケジュールを進めたい、というのはよく理解できることだが、同時に前述のような問題点があって、どうやってそらを処理するかを理解し、予測することが大切である。こういったタイプのレースで選手を排除するようなことのないよう頑張るべし。

シクロクロスシーズンにおいて一日の明るい時間の全てを使ったスケジュールというのは難しい。事故や準備、登録、リザルト、異議申し立て、コースの修理などにより、もしレースが遅れてしまったら、残りのレース時間が短くせざるを得なくなる。これも審判とレースディレクターのコミュニケーションの問題である。

以上、後はうまくやってくれ。


はい、以上でした。全般に結構当たり前のことしか書いてませんでしたが、レースを組み立てる時に考慮すべきことは網羅されているのかしら(多分。僕は運営やったことないけど)。

ゼッケン番号昇順降順で、というのは苦肉の策という印象。レース参加者をできるだけ多く、というのもわかりますが、そういういびつなレースを組むぐらいだったらそもそもレース構成を考えな方した方がいいんじゃないか。でも最後の工夫としてはありなのか。

個人的には新しい概念というか新手法を期待していたのですが、ちょっとガッカリ。どちらかというと全体的に2016末のレース運営のような不備をこれからはやらないように!ということを言いたかったのかな、という感じを受けます。

まあレース運営は思った以上に色んな事に気を配らなければいけないものですね。スケジュール組むのも難しそうと実感。レースを運営するオーガナイザに感謝!

というわけで、USAC のレース運営ガイドラインでした!

80%ルールとUSA運用ガイドライン (2)

前回投稿の続き。今回はガイドラインの内容に入っていきましょう。ガイドライン原文は USA Cycling に置いてあります。「USA Cycling cyclocross best practice」で検索すると出てきます。

全部翻訳するのは辛いので、ざっくり要点だけで。本文中に(*ほにゃらら)と入っているのは僕のツッコミ。USAC = USA Cycling(協会)。

それでは行ってみましょう。


シクロクロスレース運営のための Best Practice

2016 Cyclocross シーズン(*1)において、周回遅れやリザルトについて大きな問題になってしまったが、ルールの解釈やレーススケジュールなど沢山の問題があったためだろう。というわけで以下に運営指針を述べる。

(*1: 2016-17 シーズンと思われる。)

選手のレース終了処理

選手がレースを終了する場合は3種類。

  • レースに残っている選手は、ゴール順位と周回数でリザルト決定。
  • 周回遅れにされた選手は、周回遅れになった後でレースから除外される。除外処理は「ゴールより前の決められた場所」で行なう。(*周回遅れを予想してラップされる前に除外するのはダメらしい。)
  • 80%ルールであらかじめ的に除外された選手は、周回遅れにはならない。(* この文章よくわからず。リザルトの周回数計算に関わる?)

どうするかは運営側で議論し、すぐに選手にきちんと通知するべし。考慮すべき項目は以下。

  • レースのレベル(UCI エリートなのか、ホビーなのか)
  • スケジュール的な制限
  • 出走人数
  • 混走レースかどうか/混走の状態
  • 予想ラップタイム
  • コースの状態(狭い?テクニカル?だだっぴろい?など)
  • レースディレクターの願望
  • 計測システムのタイプと性能
  • 審判の数
  • 天候とコースコンディションの低下

80%ルールの使用

レース展開が重要な場合に80%ルールを使用する。すなわち、先頭が来る前にお邪魔さんを排除してトップ選手が十分に力を発揮できるようにするのだ。だがしかし、80%ルール適用は UCI 世界選手権とワールドカップのみで必須とされている。よってそれ以外については現地判断でよろしく。また、アマチュアレースではなく競技レースとして導入するかを考えるべきことである。

80%ルールを適用するとレース展開に絡めない選手の競技時間は短くなってしまうが、特に下位カテゴリーのレースでは望まれない結果となる。運営はよく選手側とコミュニケーションをとり、状況を把握すること。「UCI レースであれば80%ルールが使用される」が一般的な認識。

もちろん、80%ルールが正しく運用されること。USAC の規則にもあるように、80%ルールの使用は超厳密的にするものではない(* 原文: the use of 80% is an approximation=近似)。目的は次の周で先頭に追いつかれないように、なるべく遅く(*2)選手を除外することだ。選手になるべく多くのレース時間を与えるよう頑張りなさい。特にレース展開を左右する終盤での80%ルール運用が重要だ。

(*2: なるべく遅く= as late as possible で誤訳ではありません。ここだけに限らず、随分お客様=クレーマー対応的な気もしますが。)

また、もしある選手がトップの選手が来る(*3)前にフィニッシュラインを超えて最終周回に入れるならば、完走を許すべきだ。また、大会スケジュール的にもそれができる状態にあること(後述)。

(*3: 原文 = leader comes in for a finish。ゴールエリアに来たら、という程度だと思われる。ゴールラインについては明言していない。)

USAC のポリシーとしては、80%ルールは Elite レベルのレースだけ。アマチュアイベントでは運営側からの要求がない限りこのルールは使うべきでない。もし使うならばきちんとアナウンスしましょう。

全ての選手にレースを続けさせる

ほとんどのレースでは周回遅れになってもレースの続行が許される。それにより、表彰台を望むような選手でなくとも、エントリー料の対価として満足するだろう。以下のいずれか(もしくは複数)ならばレース除外は必要ないだろう。

  • アマチュアイベント
  • 小さな規模のレース
  • 複数カテゴリーの混走レース
  • 難しくないコース

周回遅れを良しとすると、計測・集計は大変になる。レースディレクターは混走などにも対応できるそれなりのシステムを使うこと。

(* ここから具体的なレース内容を挙げて解説する。)

例1:

  • 男子 U23 国内選手権のレース
  • 80人出走
  • 先頭の始めの2周のタイムの平均が7分

このような Elite レベルのレースでは表彰台どうこうが非常に重要であり、80%ルールは適用されるべきだ。5:36遅れたら除外。ただし最終周回突入までに先頭に追いつかれなければ続行でOK。

例2:

  • UCI CX のレースが開かれている週末に開催されるアマチュア・マスターズのレース
  • 35+と55+クラスの混走(成績は別)(*4)
  • 出走は併せて120人
  • ラップタイム予想は8分程度
  • 35+の選手を前に並ばせて同時スタート

UCI レースに関係しないアマチュアイベントであり、参加者にとってネガティブであろうし、80%ルールは適用すべき必要はない。もし適用したら55+のかなりの選手が除外されてしまい、もしかすると「実際のゴールにたどり着くのは数名のみ」とか「間違って55+のトップを除外してしまった」という事態を招いてしまうかもしれない。除外はせず、すべての選手をレース先頭と同じ周にてゴールさせるのが良い。

*4: 35+ とは35〜40歳クラス、55+ とは55〜59歳クラス。

例3:

  • 地域レース
  • 9〜18歳の少年少女のレース
  • 15-18歳グループが最初にスタート → 30秒後に9-14歳グループがスタート
  • 人数は合計30人
  • 予想タイムは15-18グループで8分程度

これもアマチュアイベントである。80%ルールを適用するなんてしたら涙々々になるだろう!遅いであろう低年齢クラスが後ろからスタートしているが、それがさらに上の年齢クラスの基準で足切りされてはたまらない。こういったときはもちろん除外処理なしで、同時スタート、もしくはより少ないタイム差でのスタートにするのが良いだろう(*上のグループの先頭が追いついてしまうのをできるだけ遅らせるため?)。スタートの時にグループの境界に線を引いてしまうもよい。そうすれば競争相手がよく分かるし、選手の多さに混乱することもないだろう。ローカルレースでしかもキッズクラスだ。楽しいレースにしようじゃないか。


半分来たので、とりあえず今回はここで終了。概ね当たり前なことしか書いてないですが、ガイドラインなのでこんなもんでしょうか。

適用する対象レースとしては、やっぱり UCI であるか、Elite なクラスであるか、という境目に注目しています。日本でも UCI は必須。JCX もほとんど適用、ローカル C1 では無しというのが一般的ですね。日本では混走レースで80%ルール適用したことは無かったと思います。

個人的には「最終周回突入前に80%はオーバーしていてもトップに追いつかれないならOK」という指針が気になります。過去に出場した UCI レースで「トップ来てるけどまだ差があるから、このままゴールライン超えられれば完走できるかも!」というところで厳密80%適用で終了〜、というのが何度あったことやら。マイアミとかマイアミとか。いや、もちろん開催側がそういう方針だったというだけで、それで良いんですけどね。でもやっぱり、確かにちょっと悲しかった、かな?

さて、次回は “Scheduling and Timing” から参りましょう。

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80%ルールとUSA運用ガイドライン (1)

今回のネタは80%ルール。CX Magazineの記事が元ネタです。日本では C1, CL1 の JCX, UCI レースで適用されることが多いかな。確かに必要なルールではあるのですが、外国では80%ルール無しのレースも少なくないようです。さて、どこまで厳密にすべきなのでしょうか。

元記事は2016年12月6日の「USA Cycling Issues 80% Rule Guidance in CX Best Practices Document for Officials and Race Directors」より。タイトルの意味は「レース運営者のための80%ルールの適正な運用ガイドラインを USA Cycling(協会)が発表した」。

※斜め読みでやったので和訳はざっくりです。

80%ルール

と、その前に「80%ルールとはなんぞや」。ルールブックだと競技規則の5.1.052に記述があります。ざっとまとめると以下の通り。

  • レース第1周目のタイムの80%のタイムを基準とする。
  • レースの先頭から基準タイム以上遅れた選手はレースから除外される
    (実際には指定ゾーンにてコースから出される)
  • 最終周回にいる選手には80%ルールは適用しない
  • UCI 世界戦・ワールドカップでは80%ルールは適用されなければならない。
  • その他のレースについては運営者の判断で。
  • ラップアウトした順序を勘案しつつリザルトには掲載する。

簡単に言えば「周回遅れになりそうな選手を除外するルール」であり、一番大きな目的は「周回遅れの選手が先頭争いに影響することを避ける」です。

アタックして2位を引き離したのに、シングルトラックで周回遅れの選手に追いついて、なかなか抜けず→2位に追いつかれる、とか。

先頭が周回遅れの選手に追いついちゃって、追いつかれた側が熱くなってて気付かずにオイオイということは実際にも結構あると聞きます。ベストリザルトをという気持ちもわかりますが、遅れた選手は自分の位置を把握し、レースが来たならば明確にコースを譲るのがマナー。大抵観客も「トップ来てるよ〜」とか教えてえくれるものですし、それが聞こえないぐらい熱くなっているならテンションのコントロールができていません。レースは攻め8割、守り2割ぐらいの心の配分がベスト。

まあしかし、80%ルールがあるレースでは遅い選手は「最後まで走れない」可能性があるわけで。まだ30分なのに、ってところでレース終了を告げられるのは結構こたえます。出走した選手のうち9割が降ろされてがっかりしているレースだったりすると、可哀想だというのもまた然り。日本のレースのレベルがまだバラツキがある(高いところでまとまっていない)、というのも一因だとは思いますが。

話の経緯

CX Magazine によると、Steve Tilford さんがブログで Jingle Corss 2016 の Masters レースについての記事を書いたのが発端の1つ(*1)。ちなみに Tilford さんはアメリカの Elite, Masters のナショナル選手権で何度も勝っている強い方のようです。

Masters で様々な年代が時間差で出走し、ごちゃごちゃな状態(しかも200人以上!)。そして80%ルールで除外すべきでない選手まで除外されるというカオスが展開。Steve さんは運営者がレースを時間通り進めるために80%ルールを使って選手人数をコントロールしたのではないか、とも。

最後の方に書いてる言葉が印象的。まとめると以下。

  • 周回遅れの選手が居るのもレースの一部だ、というのが僕の答え。
  • 全ての選手が同じ周でゴールできる古き良き時代に戻ろう。
  • (とくにローカルレースでは。)
  • もし君がレースで勝てるなら、周回遅れ君をパスするぐらい問題ないじゃないか。
  • 選手をパスするのも競技の一部だ。例えば F1 の用に。
  • 選手をパスするのは難しいものだが、F1 ほどじゃない。

なるほどな答えですね。割り切っているというか。

80%ルールが正しく運用されず、かつそれを質問したが USA Cycling からの回答がなかったという問題点も含めての結論のようですが、確かにきちんと運用できないんだったらやらなくていいじゃん、というのは当然。

*1: (もう1つは米オースティンで行われたナショナル選手権の Junior レースで、3つのジュニアのカテゴリーが混走し、かつ80%ルールが運用され、Junior Women15-16 のトップを走っていた Turner Ramsay が間違って除外された、というもの。Turner ちゃん大泣き。)

ガイドラインの作成

というわけで、80%ルール運用問題が大きな問題に発展してしまい、USA Cycling 協会が運用のためのガイドラインを定めたのが、今回のネタ。

と、前フリだけでスミマセンが、今回はこの辺で。次回は実際にガイドラインの内容を見てみましょう。

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UCI Point Racer データ(男子編)

前回に引き続き、UCI ポイントを持っている選手について見てみましょう。今回は男子 Elite。UCI ポイントランキングは 2017/2/4 のものを使用しました。

それでは早速行ってみましょう!

国別選手数

女子 UCI ポイント保持者は480名だったのに対し、男子では619名。もっと多いかと思いましたが。

女子 Elite ではアメリカが多くて、ベルギーが意外と少ないという結果でしたが、さて男子ではいかに。ということでまずは国別に人数集計してみましょう。

男子 Elite UCI ポイント保持者@2017-2-4(国別)

※人数が20名に満たない国は「その他」に合算しました。

アメリカがやっぱり飛び抜けて多いですね。国内での UCI レース開催数が多く、競争相手がいないためでしょう。これは女子とかわらない傾向。

そして2位はベルギー!女子人数は少なかったのですが、やはり華の男子 Elite。周辺国の選手がこぞってやってくる環境ですが、やはりヨーロッパのドンとして人数を揃えています。

3位はフランス,,, あれ?ベルギーのライバルのオランダだと思ってましたが、オランダは24名。ベルギーの半分もいないぞ。フランスはベルギーに接している分、ポイント獲得の機会も多いのでしょう。Under23 などでは前の方で展開しているのをみますが、男子 Elite では目立って強い選手は思いつきません。やっぱりロードの方が盛んなお国柄なのでしょうか?

ベルギー、フランス以外を見てみると20〜30人でおおよそフラット。「その他」の人数も居ることから「飛び抜けて強いのはいないけど、世界各国ともそこそこ強い選手が平均的に居る」ってところでしょうか。

次は上位100名。

男子 Elite UCI ポイント保持者@2017-2-3(上位100名のみ/国別)

来たっ、ベルギー!なんと56人中25人が100位以内。プロも多いし、ガチで走っている選手率が高いってこと。当然25%だから、4人に1人はベルギー人かよ。

アメリカはまあこんなもんかな、ってところでノーコメント。

先程目立たなかったオランダですが、面目躍如の3位の人数。やっぱりシクロクロス大国でした。人数的にはベルギーには劣りますが、若い選手の割合が多いのが◯。

フランス、スイス、チェコ、そして謎の(笑)スペインがある程度人数を揃えていますが、他はそこそこの人数。日本は Anchor の沢田時選手が77位、BLITZEN の小坂光選手が83位。ちなみに Toyo の竹之内選手は227位。国内レースでの不調がランキングに響いたようで、17-18シーズンの復活を期待したい。

年齢別選手数

さて、青と黄色で U23 とそれ以外のオッサンベテランを分けてきましたが、女子とはちがって意外と黄色の U23 選手数がそれほど多いというわけでは無さそうですね。

同じようにグラフを作ってみましょう。

男子 Elite UCI ポイント保持者@2017-2-3(年齢別)

Tankograd Central(自転車研究所) からのネタですが、54のところでグラフが持ち上がっているのは我らがスワコレーシングの帝王、小坂正則選手。ちなみに2位(?)は49歳でその差5歳。若い選手のためにも、親父の星としてもこれからも頑張って欲しいところ。

さて、まずは全体人数(青線)を見てみると、女子とおなじく Under23 の世代が最も多くなっています。そこからは全体的にはダラダラ~と減っていきますが、27歳で謎の落ち込み。兵役とかの関係?30付近でも落ちこんでいますが、三十路を迎えて人生考え直す頃合いなので何となく分かる気がします。

トップ100名(黄線)では、U23 世代は比較的少なめになっています。女子とは異なり、ベテラン選手の層も厚く、すぐには成績を出せるほど甘くはない、ということでしょう。

そしてやっぱり27歳での謎の落ち込み。理由はやっぱり不明。

全体的には「強いわけではないが、次の世代を担う選手が沢山活躍している」という、競技スポーツとしては良い傾向が見られます。

Under23 選手数

さて、最後に女子も併せて、U23 選手の割合を見てみましょう。

Under23 選手数割合(ランキング、地域ごと)

女子では U23 の割合が地域ごとで大きく異なっていす。

しかし、男子では似たような傾向(つまりヨーロッパでは U23 選手が多く、それ以外では少ない)が見られますが、その差は大きくはありません。

トップ選手100名中の U23 選手割合は21% (UCI Top100)。これを見ると男子では「強い国は若い選手が多い」わけではないようです。むしろベテラン層が厚いとみることもできます。もちろん、女子では U23 が17歳からだったり、男子のほうが競技として盛んである、というのも要因ではありますが。

まあ、男子ではそれほど問題視しなくてもよさそうです。概ね2〜3割が U23。

まとめ

以上、男子 Elite の UCI ポイント所持者について見てみました。

やっぱり日本の C1 の選手構成と比べると若い選手が多いという点が大きな違いでしょうか。

C1と男子 Elite UCI ポイント保持者の割合

日本国内として15-16の C1と、UCI ポイント保持者@2017/2/3 について、年齢構成を並べてみました。

ほぼ真逆の傾向ですね。C1 は38〜43ぐらいの年代がごっそり。シクロクロスだけでなく、MTB も強い選手が多いイメージのある世代です。

ただし、やっぱり次世代となる若い年代が少ないのは競技スポーツとしてはバツ。(毎度の結論ですみませんが。)まあ特殊なスポーツって広がらなければただのマニアック&マイナー競技で終わってしまいますから、そうならないようにどうやって盛り上げていくか、巻き込んでいくかは考えていくべきでしょうね、

以上、UCI Point 所持者、男子編でした!

UCI Point Racer データ(女子編)

今回のネタの着想は Tankograd Central(自転車研究所) より頂きました。日本選手の UCI Point についてもまとめられています。UCI のページで UCI Point のランキングに国やら年齢やら載ってるとは嬉しいですね(誰が?)。早速まとめてみましょう。

まずは予備知識を。UCI Point は52週のローリングランキング、と表現されます。規定としてはシクロクロスの競技規則の5.2.003あたりに見られますが、要するに

  • UCI レースでの獲得ポイントを積み上げて多い順に順位を付ける
  • 1年以上前のポイントは加算しない
  • ランキングは UCI の発表によって更新される(発表が無ければ順位変動はしない)

というものです。何が言いたいかというと、UCI の発表があるたびにドンドン変わっていくランキングで、今日123位、明日456位、明後日222位ってこともあり得るわけです。本記事では 2017/2/3 時点でのデータを利用しています。世界戦が終わった直後だから、ちょうどいいかな?

今回は女子 Elite を見ていきましょう。

国別選手数

UCI ポイント持っているからと言って「強い国」だとは限りませんが、1つの指標になるでしょう。というわけで国ごとに UCI ポイントを持っている選手の人数をカウント。

女子 Elite UCI ポイント保持者@2017-2-3(国別)

人数が10名以下の国は「その他」に合算(*1)。

アメリカが飛び抜けて多い77名。これは純粋にアメリカ国内の UCI レース開催数が多い、それから国外からの参加者も少ないため、ポイントも奪われにくいからでしょう(参考→17-18 UCI カレンダー)。

逆に大国ベルギーが21人だけ!オランダより少ないは分かるとしても、シクロクロスにはアウェー感のあるイタリア、スペインよりも少ない数になっています。

考えてみると、確かにワールドカップなど UCI レース開催は多いですが、周りの国から遠征してくる選手も多いためポイント獲得争いが熾烈なのかもしれません。それとも女子は意外と人気ないのか?

続いてさらに強い選手ではどうよ、ということで UCI ポイントランキング上位100名で見てみましょう。

女子 Elite UCI ポイント保持者@2017-2-3(上位100名のみ/国別)

割合としてはアメリカとその他、それからスペインが減。フランス、ベルギー、オランダが目立っていて、全体的にはそこそこ僕のイメージどおりという印象。

日本の4名は坂口(59位/U23)、武田(74位)、與那嶺(82位)、今井(93位)。武田が中国で UCI ポイントを獲ったぐらいで、後は日本国内レースで稼いだポイントでの順位。UCI ランキングがスタートの並び順に影響してくるので、意外と稼げているようです。

*1: UCI ポイント所持者10名以下の国は以下の通り(Elite人数-うちU23人数)

  • アルゼンチン (1-0) ←どこで UCI ポイントゲットした?
  • オーストリア (10-2)
  • チリ (3-0) ←どこで(以下同文
  • デンマーク (10-4)
  • エストニア (7-3)
  • フィンランド (6-2)
  • ハンガリー (7-2)
  • アイスランド (2-1)
  • アイルランド (10-0) ←イギリス近い
  • ラトビア (1-0) ←ごめん、どこだっけ?
  • ルクセンブルグ (7-2)
  • ポーランド (10-5)
  • スロバキア (9-6) ←U23多めで◯

年齢別選手数

ここまでの2つのグラフをみると、意外と黄色のグラフ、つまり U23 の割合が高そうだ、というのがわかります。男子 U23 は19〜23なのに対し、女子の Under23 は17〜23歳。その分だけ男子より U23 選手数が多くなります。

年齢ごとの UCI ポイント所持者人数を数えてみましょう。

女子 Elite UCI ポイント保持者@2017-2-3(年齢別)

なんと Under23 以下が多い!高校生年齢の17,18がもっとも多く、大学生年代が続きます。25歳の凹みは「就職したら一段落」?その後も競技を続ける人は35歳ぐらいまで、と人生の縮図が見えそうなグラフですね…

女子 Under23 のレースが Elite とは別口で開催されることはほとんどなく(*2)、U23 の方がポイントを稼ぎやすい、というわけではありません。純粋に人数が多いのでしょう。

上位100選手のみ(Top100-)で Under23 に注目してみると、さすがに割合そのままとは行きませんが、やはり23以上の年代よりも選手層は厚いように見えます。

*2: ナショナル選手権で女子 Under23 が開催されている国も結構あって、16-17シーズンの U23 レースは19レース(世界戦など含む)。

Under23 選手数

1番最初のグラフを見返してみましょう。

女子 Elite UCI ポイント保持者@2017-2-3(国別)

チェコから左はヨーロッパ。それより右がそれ以外。眺めていると、

「右の方青いところが多くね?」

ってこに気づきます。 つまりは U23 が少ない。逆にヨーロッパは U23 が多く、もしかして半数以上?というわけで U23 の選手数の割合を出してみると、

UCI ポイント所持者における Under23 選手数割合(ランキング、地域ごと)

おっと、本当にヨーロッパ半数以上が Under23 でした。

それに対して欧州以外は約2割ぽっち。日本も全18人に対して U23 が3人で16.6%と最低レベル。こんなに違うものか…

競技者目線では「やはり若い選手が多い方が」と考えてしまいますが、それでは毎度なので、今回は視点を変えて考えてみましょう。

ヨーロッパ以外のエリアで Under23 が少なく、それより上の選手が多い。ということは高校・大学を出て、就職して結婚してと人生が進んでいってもシクロクロスを続けられる環境・社会が整っているということでは無いでしょうか。ヨーロッパではスポンサーの付いたプロは多いが、アマチュアレーサーはそれほど多いわけではないと聞いたこともあります。シクロクロスってお金かかりますし。

楽しく続けられるのっていいことですよね!個人的には全日本取れなかったから全部おしまい、というのもキライじゃありませんが、アマチュアスポーツとしては日本、アメリカともに悪くない感じで広まっていて、年齢が進んできてもチャレンジできるようなスポーツになりえているのかなと思います。

ま、もちろん次の世代が増えて世界で活躍して欲しい、という願望はみんな持っていますが、ね。

まとめ

以上、女子 Elite の UCI ポイント所持者について見てみました。

U23 選手数以外の点では、ベルギーの選手が少なかったのが意外でしたね。少数精鋭なのでしょうか。確かにベルギー男子ほど圧倒的では無いですので、まあイメージどおりかもしれません。

次回は男子!さてはてアメリカ、Under23 の選手割合はどうなることやら。

17-18 UCI カレンダー

UCI 世界戦で盛り上がっていましたが、ひっそりと 2017-18 シーズンの UCI レースカレンダーが発表されています。

http://www.uci.ch/cyclo-cross/calendar/
(上部のバーにある「Season▼」で 2018 を選択すべし。)

日本国内

まずは JPN から見ていきましょう。17-18の UCI 指定のレースは8つ。UCI レースは3つ増えました。*付きが新しく UCI になったレース。

  • 10/9 * 茨城シクロクロス取手ラウンド
  • 10/17 東北 CX Project 寒河江ラウンド
  • 11/4 * Starlight-cross(幕張)
  • 11/17 関西シクロクロスマキノラウンド
  • 11/25 Rapha Supercross 野辺山-Day1
  • 11/26 Rapha Supercross 野辺山-Day2
  • 12/3 * 宇都宮シクロクロスシリーズ
  • 12/9-10 全日本選手権(長野南牧村)

UCI ポイントが稼げるレースが8つも国内にあるなんて、いい時代になったもんだ。宇都宮はろまんちっく村だったはず。増えたレースはいずれも関東圏。

ちなみに全て Category-2 の UCI レースなので、10位に入らないとポイントはもらえません。それでもポイントをより多く積み重ねれば、ヨーロッパ行ったときでもポイントのお陰でスタートで前の方に並べます。特に C1 選手は頑張りましょう!

おとなり中国

海外遠征で、といっても本場ヨーロッパは遠い。しかし近年はお隣さんの中国でも UCI レースが開かれています。日本選手も選手団を組んで出場していますね。CHN で調べてみると3レース。

  • 9/3 “Qiansen trophy” Fengtai Changxindian(北京市中央部)
  • 9/6 “Qiansen trophy” Yanqing(北京市北西部)
  • 9/10 “Qiansen trophy” Luoyang WanAnShan(河南省西部/中国中央少し東寄り部)

Qiansen(キアンサン)は中国の体育施設の業者だとか。Qiansen trophy は日本語なら「鈴木杯」って感じ?

随分頑張って開催していますね。残暑の時期なのがキツイですが、立派なセレモニーがあったり、空港までバスでのお迎え付きだったりと結構至れり尽くせりなレース。

そして驚くことに、3つのレースともに Category-1 クラスの UCI レースになっています。Category-2 と比較すると開催側の要件が厳しくなりますが、獲得できる UCI ポイントもアップ。もちろんそれを狙って強い選手が来てしまうので UCI ポイントゲットはどのみちイバラの道なのですが…

データ編

では UCI カレンダー全体でデータをまとめてみましょう。まずは月ごとのレース開催数から。ちなみに1月末の世界選手権についてはカレンダーに掲載がありませんでした(2017.2.1時点)。

2017-18 UCI レース開催数(月ごと)

「その他」に分類されているのはナショナル選手権に割り当てられる CN(Category National?) と大陸選手権 CC(Category Continental?) の2つ。Category-1 レースは45、Category-2 レースは88。CC なレースは Pan-american大陸チャンピオンシップとヨーロッパ選手権の2つ。

1月末に世界戦があるので、それに向けて盛り上がっていくかと思いきや、10月の開催が最多。1月は世界戦の週には UCI レース設定しないので、数としては少なめ。2月は残り火の感。

シーズン全体としてはワールドカップやらプレスティージュやら UCI レースこなしていって、ナショナル選手権やって→世界戦できれいにストンと終わるというきれいな形。日本では全日本選手権は早くて12月の第2週ぐらいにやるので、そこが山場のようになってしまっていて、以降の盛り上がりが今ひとつな感があります。どうせ暇だし正月過ぎにでも全日本やれば?

サマークロスかよ!とツッコミたくなるのが8月の3レース。ですが、実はこの3レースはいずれもオーストラリアのもの。南半球の8月は6ヶ月引けば北半球の2月に相当、ってことでシクロクロスには悪くない時期。しかし南半球の選手はコンディショニングが大変だ(ほとんど見たこと無いけど)。

次は国ごとにまとめてみましょう。

2017-18 UCI レース開催数(開催数)

UCI を開催しているのは上のグラフの20カ国のみ。何故かベルギーなどはナショナル選手権の UCI 設定がなかったりします。

まず目を引くのがベルギーとアメリカ。アメリカの方がレース多いじゃないか!でも UCI Category-1 レースの開催数ではベルギーが圧倒的。流石です。

いろいろ発見があって面白いですね。箇条書きでどうぞ。

  • オランダは少なめの7レース。イメージと違うなあ。
  • 逆にスペインが意外と多めの8レース。イメージ無いなあ(苦笑)。(*1)
  • ドイツ少なすぎ(1レース)。強い選手居たのに。
  • 意外とイギリスでも開催されている(7レース)
  • フランスでもちゃんと開催されている(7レース/ Category-1 が4レース)。
  • スイス(11)、チェコ(10)はイメージ通り。

で、改めてグラフを平たく見てみると、日本の UCI レース開催数8というのは実は5位タイなのです!Category-1 のレースが無いのでちょっと格好がつかないですが、世界のいろいろな場所の Cyclocross 関係者が日本に注目している、というのにも頷けますね(*2)。

本場ヨーロッパから見れば日本は中国とともに極東の孤島なわけですが、強い選手がモチベーションをもって集まるようなレースが増えていけば自ずとレベルも上がっていくでしょう。もちろん、大きな手間をかけて UCI レースを開催してくれるオーガナイザへの感謝も忘れずに。

ただ、1つ前の記事にも書きましたが、UCI レース開催数ではトップのアメリカですが、Elite Men の16-17の成績はいまひとつ。コースがワヤだったというのもあるかもしれませんが、やはりヨーロッパのレベルには劣っているのかな、という印象。

井の中の蛙になるリスクは日本も同じです。もちろん UCI ポイントがまともにあって、まともな位置からレースがスタートできるのは良いことですが、実際に本番(要するに世界戦)で戦い、成績を出すには「選手が強い」というのが絶対条件です。UCI レースを増やすだけではなく、それによっていかに選手のレベルアップをしていくかが今後の課題となるでしょう。

以上、UCI レース数からシクロクロスの世界情勢(?)と日本を考えてみました。

*1:(追記)これを書いた時点ではスペイン?と思ってましたが、男子 Under23 で Felipe ORTS LLORET が2位。ダークホース的な扱いだったけど。
*2: お台場とか結構有名らしい。