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UCI と JCF と5つの輪っか(3)

前回に引き続き、自転車連盟などの組織について見ていきましょう。

ASO

と、その前に寄り道をしましょう。世界最大の、といっても良いツールドフランスを主催する ASO (Amaury Sport Organisation) について。ほとんど Wikipedia のまとめですが。

まずは概要。

  • Amaury(アモリ)は人の名前
  • そもそもツールを創設したのはスポーツ新聞社レキップ
  • レキップ新聞紙の色が黄色→マイヨジョーヌが黄色に
  • 1992年新聞社レキップはツール主催権を譲渡
  • 新聞レキップは現在は ASO の傘下
  • ASO はパリ〜ルーベ、パリ〜ニース、フレシュ・ワロンヌなども主催。
  • ダカールラリー、パリマラソンも主催

さて、前回、前々回から考えると IOC→UCI→JCF→,,, と上限関係が成り立っているように見えますが、ASO はここからは少し外れています。

そもそもツールドフランスは五輪より(一般的な認識として)格が上ですし、UCI の世界戦のアルカンシェルよりも上でしょう。よって ASO は UCI にヘコヘコして UCI に認定してもらって、UCI カレンダーに入れてもらう必要はまったく無いのです。

しかし世界の自転車競技を代表しようとする UCI としては気に食わないところ。以下時系列でどうぞ。

  • — 2005年 —
  • UCI「UCI ワールドカップやめてプロツアーを制定しました。」
  •   「プロツアーに出られるのは UCI 認定出場ライセンス持ったチームのみね。」
  • 当然 ASO 主催のツールやパリニースはプロツアー対象レース。
  • ASO(はぁ?招待チームは自分で選びたいんだけど,,,)
  • — 2007年 —
  • ASO「そのチームはライセンス持ってるけどパリニースに出場させないから」
  • UCI「え,,,」
  • ASO「ツールにプロツアー以外のチームもワイルドカードで出しまーす」
  •   「それから、来年からうち主催のレースはプロツアーから撤退するわ」
  • ジロ&ブエルタ「俺も俺も」
  • UCI「ぐぬぬ,,,」
  • — 2008年 —
  • UCI「じゃ、じゃあツールは新しく作った UCI ワールドツアーに入れるから」
  • ASO, ジロ, ブエルタ「はぁ?もういいから。新制度でやろうや。」
  • UCI「は、はい,,,」
  •   「で、でもでも、ツールには UCI プロツアーの全チームを出してね。」
  • ASO「はあ(怒)?!」
  •   「ツールにプロツアーのアスタナは招待しない。ドーピング多いし。」
  •   「ところでさ、パリニースがプロツアーより格下ってどういうこと?」
  •   「2008パリニースは UCI とか要らんから。仏競技連盟の主催でやるわ。」
  • UCI「パリニースに出た選手・チームに制裁を課すぞコラ」
  • ドンパチ、バチバチ。
  • IPCT(*1)「まあまあ、参加チームの投票で決めようや。」→ASO 勝利。
  • UCI「仏競技連盟に制裁10,000スイスフランだ!」
  • 仏連盟「あっそ。来年からもウチがパリニース主催するから。」
  • コフィディス「来年は UCI プロツアー登録とかもういいや」
  • 他全チーム「俺も俺も。ライセンス料高いし、大したレースないやん。」
  • UCI「ヨーロッパ競技連盟は支持してくれてるし、プロツアー継続しようよ(泣」
  • 2008/8 IOC の仲介により和解(?)
  • 2009,10 UCI, ASO, ジロ・ブエルタ主催者による UCI ワールドカレンダー開催
  • 2011 UCI ワールドツアー創設(= UCI プロツアー消滅)

*1: IPCT = 国際プロ自転車チーム連盟

というわけで、現在は UCI ワールド・ツアーという形で運営がなされています。

だがしかし。

結局 UCI ワールドチームというライセンスを持ったチームが優先的にワールド・ツアーシリーズ(グランツール含む)に出場できるのは変わりません。プロフェッショナルコンチネンタルチームであれば招待でも出られますが、数は少なめ。

これは ASO にとっては大会出場チームを選ぶ自由度が減るわけで、2017年は ASO は主催イベントは「ワールド・ツアーじゃなくていいや」と発表。チームにとっては、苦労して UCI ワールドチームライセンス取得したのにツールに出られないかもという罠。

後続のニュースが見つけられなかった(←調べるの疲れた)のですが、2017 World Tour のレースを見るとパリニースもツール・ド・フランスも入っているので、落ち着いたのでしょう。

金銭的な問題もありますが、まあ要するに主導権争いをしているわけです。

ASO が UCI、ひいてはオリンピックに対抗できるようなコンテンツを持っているというのがポイント。ASO としては五輪や世界選手権なんてカンケーねえから邪魔すんなよ、というのが本音でしょう。建前としては世界で手を取り合ってみんなで頑張りましょう、というのはあるかもしれませんが。

逆にそういったコンテンツを持っていなければ、おのずと上位組織に従属するような形を強いられる可能性は非常に高いわけです。例えば JCF はオリンピックに日本人を出させたいでしょうから仏競技連盟のように UCI 逆らうことなんて絶対にできないでしょう。

また、UCI も世界選手権という大きなコンテンツを持っており、ぶっちゃけアルカンシェルの方が五輪金メダルよりもステータスは上。そうなると UCI としては IOC にヘコヘコする必要ないのかもしれません。IOC としても UCI の協力がなければ五輪の予選もできないわけですし。

いやしかし、調べてみてやっと UCI xxx ツアーについて理解。政治ですねぇ。

AJOCC

さて、やっと AJOCC 登場です。正式名称は「日本シクロクロス競技主催者協会」。一般社団法人。

ちなみに JCF は公益財団法人。簡単に言うと、一般社団法人は個人が集まって頑張りましょう、という団体。公益財団法人は基金を使って広く公益のために働きましょうという感じ。

AJOCC の About ページの(目的)は以下のようになっています。

この法人は、公益財団法人日本自転車競技連盟の競技規則に従いシクロクロス競技を実施する大会主催者を統轄し代表する団体として、シクロクロス競技の普及振興と、シクロクロス競技者の心身の健全な発達に寄与することを目的とする。

一言で言ってしまえば「オーガナイザーの集合体」。JCX レースを運営したり、オーガナイザー間でのシクロクロスについての情報共有や議論といった活動が中心となっています。ちなみに個人のみならず、都道府県車連の関係者も加盟しています。

さて、JCF との関係。

例えば全日本選手権の主催は JCF ですが、実際のレース開催地の選定などについては AJOCC 内で議論されているようで、ほぼそのまま JCF を通して発表されます。運営の大部分も個別のオーガナイザがやっている印象。

また、全日本の男子エリート・U23 の出場資格は JCF のナショナルランキングによって制限されますが、これはほぼ AJOCC のトップシリーズである JCX シリーズとイコールです(*2)。

JCX シリーズのレース開催については JCF は直接は関わってはおらず、言うなれば JCF が AJOCC に全日本予選を委託している状態です。ちょっと違った見方をすると「全日本への出場資格を得られるというオプションを AJOCC レースに与えている」でしょうか。

それから、これは JCF の本来の業務ですが、UCI レースの監督や審判団の派遣などを行なっています。これも JCF の協力がなければできないことですね。

さて、ここまでをざっとまとめてみましょう。全部網羅したわけではありませんが、関係性が離れている大会も追加してみました。そういえば世界戦の出場権も JCF が対象になっていますね。

IOC から AJOCC まで。

まあ大体こんなところでしょうかね。JBCF, 県車連は JCF に加盟しているけど内部組織ではないので、前回のよりもこっちの方が正しいかな?

次回は最終回。AJOCC でも一部のカテゴリーで取得が義務化されている JCF ライセンスについて考えてみましょう。

*2: 2015-16 は JCX シリーズのレースに加え、GPMistral のレースが加えられていた。

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Americanカテゴリー事情

本ブログで何かと取り上げられるアメリカシクロクロス。ちょっと前に USA Cycling 協会(以下 USAC)の CX のページを見ていてカテゴリー昇格の面白い仕組みを知り、今回はそれも含めて USAC のカテゴリー制度を調べてみました。

USAC のページではログインの機能などもあり、選手ごとリザルトも閲覧でき、進んでいるなあと思ったりします(が、進んでいない部分も多数。トップページとか。)

では毎度適当和訳で行ってみましょう。

昇格ガイドライン

まずは元ネタになったページより。https://www.usacycling.org/news/user/story.php?id=2627

このページのトップ、目に痛い黄色ボックスの中に書いてありますが内容は以下。

  • カテゴリー昇格したかったら成績を添付して申請してくれ
  • 昇格 OK ならカテゴリーシール発行するのでライセンスに貼り付ける(ライセンス再発行しない場合)
  • 昇格 OK なら Web アカウントのカテゴリーも更新される
  • Category1 はライセンス再発行になる

自己申告だと?

昇格要件

シクロクロスのカテゴリーは男子も女子も Category1〜Category5 の5段階(USAC のルールブック第1章の項1D1(a))。女子は前までは Category4 までだったみたい。ちなみにロードもトラックも同様に Category1〜5 であり、統一された区分になっています。クロス選手がロード並みに人数いるってこと?

カテゴリーは5段階でかなり細分化されていますが、実際のレースは Category1/2 とか 1/2/3 で開かれたりしているようです。

昇格はポイント制で判断され、条件は以下の通り。(pt = point)

  • Category5→4: 10レース参加で強制昇格
  • Category4→3: 10pt で申告昇格/15pt もしくは 30人以上出走レース2勝で強制昇格(*)
  • Category3→2: 15pt で申告昇格/20pt もしくは 30人以上出走レース2勝で強制昇格(*)
  • Category2→1: 20pt で申告昇格/25pt もしくは 40人以上出走レース2勝で強制昇格(**)
  • (*: ただしジュニアは4→3, 3→2 の強制昇格対象外)
  • (**: weekly series のレース、マスターズレースで稼いだポイントのうち、Category1 への昇格に充てられるのは10ptまで。)

で、肝心のポイントテーブルは以下。

順位\出走5〜10人11〜20人21〜50人50人〜
1位3457
2位2345
3位1234
4位123
5位12
6位1

結構厳しいですね。もちろん昇格すればポイントはゼロにリセットされます(1E1(e)の項)。

例えば30人出走として、3→2 ならば1位+3位x3+5位。2→1 ならば1位+3位x3+5位x6。コンスタントに上位で走れないと昇格は無理。本当に強い選手は2勝しちゃうと思うけど。

ただし、申請前36ヶ月間のポイントをカウントできます(1E1(d)の項)。つまりは2シーズン。その間に上記の例ぐらいの成績を稼げば OK ということになります。それでも結構大変そうな感じはしますが。

降格条件

では逆に降格はどうなっているのでしょう。AJOCC ではシーズンの成績によって管理されていますが、ルールブックの1E6(e)の項に記載があり、

  • 降格したい選手は Web で申請してくれ
  • Category5 には降格できない
  • 昇格した年には降格しない

以上,,, って、これだけ?

「申請すれば降格」。逆に言えば申請しなければ降格なし、ってことですよね。一方通行階段。

まあ、昇格条件が結構厳しいので上位カテゴリーの人数がまだ少なく、降格の仕組みが必要ないのかもしれません。Category1/2 などの複合カテゴリーでの開催も多いそうですし。

他競技からの移行

ロードやマウンテンバイクで USA カテゴリーを持っている場合には、上位カテゴリーに入ることができます。例えば MTB XC の Cateogy1 だったら CX Category3、ロード Category4 だったら CX Category5、などなど。

ナショナル選手権の参加資格

先程、どんどんカテゴリーが上がっていくだけ、と書きましたが、全米選手権の出場資格も調べてみました。https://www.usacycling.org/2017/cxnationals

開催期間は2017/1/3(火)〜1/8(日)。Masters 男女全部、学生クラス、TEAM RELAY、Cross Country Marathon とかハテナな Non-Championship なレースも含めてガッツリ開催しています。Junior クラスも11-12, 13-14, 15-16 と徹底。勿論 Men, Women に分けての SingleSpeed もあり。ど、どんだけっすか!

で、本題の全米選手権 Elite の出場資格はテクニカルガイドに載っています。

  • USAC などの有効なライセンスを持っていること
  • ProCX ランキング90位以内であること
  • もしくは UCI ポイントを持っていること

ProCX というのは日本で言うところの JCX シリーズ。Category1 と 2 のレースが該当で、獲得大会数制限があるのも日本と同様。2017 Elite のエントリーは男子47名(C1/2)、女子38名(C1/2/3)というわけで、90人制限といっても全部が全部出場しているわけではないみたいですね。アメリカ広いし。

サンドバック野郎

この規則とか手順を読んだ時にふと思ったのが、「申請しなかったら昇格しない?」ってこと。

タイミングよく Twitter で @daisukeyanocx より

上がらず下のクラスで勝ち続ける「サンドバック野郎」と呼ばれる人がたくさんいます。

と教えてもらいました。日本語として聞くと、サンドバック=殴られる側、みたいな印象がありますが、殴る側ってことですよね?

サンドバック野郎

USAC は選手側に昇格条件のチェックをオマカセできて楽なんでしょうが、全米選手権のデータ見てもかなりの人数が居るみたいですし、全部はチェックしきれてないみたいですね。

まとめ

さあ、いかがでしたか?

所変わればなんとやら。降格もなければ昇格は自己申告。JCX と同じようなシリーズもありーの、全米選手権が6日間とスケールがでけーの。

色々面白かったので、また思いついたら USAC についても調べてみようっと。

以上、太平洋の向こうのシクロクロス事情でした!

UCI ルール Updated@2017/1/28

1月末に UCI のシクロクロスに関するルールに変更がありました。シクロクロスにも UCI 公認のチーム制度ができたようです。今回はその内容を見てみましょう。

元ネタ: 2017/02/05_Cyclo_Cross_170128.pdf
1つ前のルール: 2016/06/05_Cyclo_Cross_160607.pdf

相変わらず適当ざっくり和訳で、行ってみましょう。


ワードの変更

全体にところどころで

UCI individual cyclocross classification → UCI individual cyclocross ranking

というように、classification(等級分け、格付け)という言葉が ranking に変更されています。UCI 発表の「ランキングを」使いますよ、というのを明示する目的での変更だと思われます。

5.1.001 – UCI recognized teams(UCI 承認チーム)

以前からあった項目で「以下のチームの名前・ウェアでレース走って良いよ(ナショナルチームの服装縛りがある場合を除く)」という規則。これまでは UCI 登録のロード, MTB チームが認められていました。

今回はこれに「規則第V章によるUCI シクロクロス・チーム」が追加。これの詳しい内容は後述。書いてある順序はクロス→ロード→MTB なので、シクロクロスのチーム名・ウェアが優先するものだと思われます。

(ちなみに文章ニュアンスとしては、UCI チームに所属してないなら適当なウェアで走っても OK な感じです。勿論 UCI チームに所属したら統一のジャージでしょうが。)

5.1.060 Rider’s clothing – Order of priority
(選手の服装 – 着用の優先順位)

「全日本ジャージ持っていてもアルカンシェル持ってたらアルカンシェル着なさい」という規定。これが規則 1.3.071 に移動しました。1. から始まるのは自転車競技一般の規則。競技によらず着用順位を統一しましょう、という意図でしょう。

5.2.014

これは新しく追加された項目。内容は以下。

  • UCI シクロクロスのチームランキングを作成する
  • 対象となるのは第V章で規定するチーム
  • 各チームごとに「UCI 個人ランキングの男子最上位選手のポイント」と「同女子最上位選手のポイント」を合計してチームポイントとする
  • 同点となったら女子ランキングで決める

男子1名+女子1名のポイントでランキング。これって意味あるのだろうか、と思いましたが、最後の項目でちょっと納得。おそらくチームランキング作りつつの女子を盛り上げたい、ということかなと思います。

でもどれだけ注目されるかは微妙な気が…

5.3.023 Leader’s skinsuit(UCI ランキング首位者のウェア)

「UCI ランキング1位には UCI がワンピースあげるから、ワールドカップでは着なさい」というルール。でもアルカンシェルと比べるとどうしても見劣りするし、デザインも味気なくてイメージ薄いんですよね。

以前までは「チームの広告をつけていいよ」でしたが今回の改定では「UCI 公認チーム所属ならば、そのチームの広告を付けていいよ」になりました。

もしスポンサーが居るならチーム登録しないと、いざという時に広告貼れない!となってしまいます。ヨーロッパプロは積極的に UCI チーム登録することになるでしょう。

第V章 UCI CYCLOCROSS TEAM

さて、やっと今回の本題にやってきました。ロードなどでは以前から UCI プロとかコンチネンタル登録とか細かく規定されていますが、シクロクロスでは今回の改定でチーム規定がごそっと新規追加となりました。

言われてみればこれまで無かったですね。さて、どんな内容で、これによってどんな違いが生まれてくるのでしょうか。

いちいち訳していると日が暮れるので箇条書きでいってみましょう。

section1 Identity(規定)

  • 選手は19歳〜
  • 所属選手3名以上
  • 女子を1名以上含むこと
  • チームは男女で分けない
  • ロードや MTB の UCI チームに加入していても手続き踏めば所属 OK

やっぱり女子を盛り上げたいのかな?

  • 2者をメインパートナー(スポンサー)として指定できる
  • チーム名はメインパートナーの企業名・ブランド名でなければならない
  • 他と同じ名前のチーム名・パートナー名は駄目

第3スポンサーの名前やロゴは配置できません。スポンサーロゴだらけゴテゴテなウェアは美しくない!ってところでしょうか。

section2 は割愛。

section3 Registration(登録)

  • シーズンごとに UCI に登録を行なうこと
  • 登録が有効な期間は8/15〜翌年3/1である
  • チーム責任者・パートナーはシーズン通じて頑張ること

さらっと書いておりますが、ここ重要ですよ!

特に本場海外でという話ですが、今まではロードチームとの関連もあり、シーズンど真ん中の1月1日に選手の登録チームが切り替わる、ということがありました。

正月の悲劇

僕もそんなもんだと思ってましたが、よく考えるとスポンサーとしても大問題ですよね。例えば自分とこの選手がワールドカップで勝ちまくってて、このまま行けば総合首位間違い無しシメシメだと思ってても、1月に他のチーム行ってしまってあっという間にライバル、とか。

選手としてもスポンサーが変わってバイクも変わってしまう場合があります。ヨーロッパの年末年始はレース続きなのですが、昨日はコ◯ナゴ、明日はリ◯レーで勝てというのはそりゃ無理ってもんです。

そんないびつな状況が改善される一手になりそうですね。

  • 申請は7/31までに(ここまでに選手の UCI 登録も必要)
  • チーム登録料あるよ(毎年 UCI 理事会が決定)
  • 1月1日〜10日のどこかで1回だけウェアのデザインを変更できる

おっと、途中のデザイン変更は OK。確かにロードチームでは正月にスポンサー変わらずともジャージデザインを変えることがあるので、このためでしょう。

チーム登録でのメリットは以下。(※ワールドカップ = WC)

  • WC ランキング首位ジャージ上の広告(前述)
  • WC 発表のエントリーリストやリザルト上にチーム名表示
  • 世界戦、WC で「ピットエリア内チームマネージャーゾーン」への ID を2つ付与、駐車パスを2つ付与。
  • UCI からの直接メーリングリストへ登録
  • UCI ウェブサイト上でのチームデータ公表
  • UCI チームランキングの対象とする(前述)

ID のとこの和訳が怪しいですが、既存の「選手1名につき2名のメカニック」に加え、さらに監督2名がピットに入れるようになる、ということだと思います。Team manager zone ってなんやねん。

section4 Contract of employment(雇用契約)

まともな雇用契約しましょう、という内容。「移籍金制度は駄目よ」という項目があったりします。

section5, 6 は割愛。

巻末の付録部分にチーム契約書の例が載っています。JCF の訳ではシクロクロスのはずの箇所がマウンテンバイクになってたりしますが…


以上、ルールブックのまとめでした。

個人競技的側面の強いシクロクロスなので、さすがにロードのようにチームがプロだコンチネンタル登録だからどーのこーの、というような厳しいことはありませんでした。

また、チーム登録しなくてもワールドカップには出場できるので、一般の選手ではチーム登録するメリットは少な目。しかし逆に大きなスポンサーを抱えてトップ争いをするフィデアやナポレオンゲームスなどは必ずチーム登録をするでしょう。

あとは女子を男子に巻き込んで盛り上げたいみたいですが、どうなるでしょうねぇ。

一番大きなポイントは、やはりシーズン途中での移籍を防ぎ、選手や観客にとってもスポンサーにもわかりやすくすること。シーズン途中、しかも世界戦の4週間前にチーム変更ってどういうこと?!ってなりますよね。UCI としてもシクロクロスシーズンの一貫性を考えた上でのルール設定であり、当然っちゃあ当然の改定です。

チームランキングは個人的にはあんまりうまくいかない気がしますが、どうなるでしょうね。

以上、UCI ルールの変更について、でした!

80%ルールとUSA運用ガイドライン (1)

今回のネタは80%ルール。CX Magazineの記事が元ネタです。日本では C1, CL1 の JCX, UCI レースで適用されることが多いかな。確かに必要なルールではあるのですが、外国では80%ルール無しのレースも少なくないようです。さて、どこまで厳密にすべきなのでしょうか。

元記事は2016年12月6日の「USA Cycling Issues 80% Rule Guidance in CX Best Practices Document for Officials and Race Directors」より。タイトルの意味は「レース運営者のための80%ルールの適正な運用ガイドラインを USA Cycling(協会)が発表した」。

※斜め読みでやったので和訳はざっくりです。

80%ルール

と、その前に「80%ルールとはなんぞや」。ルールブックだと競技規則の5.1.052に記述があります。ざっとまとめると以下の通り。

  • レース第1周目のタイムの80%のタイムを基準とする。
  • レースの先頭から基準タイム以上遅れた選手はレースから除外される
    (実際には指定ゾーンにてコースから出される)
  • 最終周回にいる選手には80%ルールは適用しない
  • UCI 世界戦・ワールドカップでは80%ルールは適用されなければならない。
  • その他のレースについては運営者の判断で。
  • ラップアウトした順序を勘案しつつリザルトには掲載する。

簡単に言えば「周回遅れになりそうな選手を除外するルール」であり、一番大きな目的は「周回遅れの選手が先頭争いに影響することを避ける」です。

アタックして2位を引き離したのに、シングルトラックで周回遅れの選手に追いついて、なかなか抜けず→2位に追いつかれる、とか。

先頭が周回遅れの選手に追いついちゃって、追いつかれた側が熱くなってて気付かずにオイオイということは実際にも結構あると聞きます。ベストリザルトをという気持ちもわかりますが、遅れた選手は自分の位置を把握し、レースが来たならば明確にコースを譲るのがマナー。大抵観客も「トップ来てるよ〜」とか教えてえくれるものですし、それが聞こえないぐらい熱くなっているならテンションのコントロールができていません。レースは攻め8割、守り2割ぐらいの心の配分がベスト。

まあしかし、80%ルールがあるレースでは遅い選手は「最後まで走れない」可能性があるわけで。まだ30分なのに、ってところでレース終了を告げられるのは結構こたえます。出走した選手のうち9割が降ろされてがっかりしているレースだったりすると、可哀想だというのもまた然り。日本のレースのレベルがまだバラツキがある(高いところでまとまっていない)、というのも一因だとは思いますが。

話の経緯

CX Magazine によると、Steve Tilford さんがブログで Jingle Corss 2016 の Masters レースについての記事を書いたのが発端の1つ(*1)。ちなみに Tilford さんはアメリカの Elite, Masters のナショナル選手権で何度も勝っている強い方のようです。

Masters で様々な年代が時間差で出走し、ごちゃごちゃな状態(しかも200人以上!)。そして80%ルールで除外すべきでない選手まで除外されるというカオスが展開。Steve さんは運営者がレースを時間通り進めるために80%ルールを使って選手人数をコントロールしたのではないか、とも。

最後の方に書いてる言葉が印象的。まとめると以下。

  • 周回遅れの選手が居るのもレースの一部だ、というのが僕の答え。
  • 全ての選手が同じ周でゴールできる古き良き時代に戻ろう。
  • (とくにローカルレースでは。)
  • もし君がレースで勝てるなら、周回遅れ君をパスするぐらい問題ないじゃないか。
  • 選手をパスするのも競技の一部だ。例えば F1 の用に。
  • 選手をパスするのは難しいものだが、F1 ほどじゃない。

なるほどな答えですね。割り切っているというか。

80%ルールが正しく運用されず、かつそれを質問したが USA Cycling からの回答がなかったという問題点も含めての結論のようですが、確かにきちんと運用できないんだったらやらなくていいじゃん、というのは当然。

*1: (もう1つは米オースティンで行われたナショナル選手権の Junior レースで、3つのジュニアのカテゴリーが混走し、かつ80%ルールが運用され、Junior Women15-16 のトップを走っていた Turner Ramsay が間違って除外された、というもの。Turner ちゃん大泣き。)

ガイドラインの作成

というわけで、80%ルール運用問題が大きな問題に発展してしまい、USA Cycling 協会が運用のためのガイドラインを定めたのが、今回のネタ。

と、前フリだけでスミマセンが、今回はこの辺で。次回は実際にガイドラインの内容を見てみましょう。

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Cyclocross への招待

最初に Cyclocross とは何でしょうか。

簡単に一言で表すならば「自転車使った障害物競走」。

たまに「マジか」というぐらいの登り、もしくは下りがあったり。平坦基調で踏み踏みの区間もあったり。ストレートでも左右にひどい傾斜がついていたり。

コーナー1つとっても鋭角コーナーだったり、逆バンクがついていたり、傾斜がついていたり。

障害物はシケイン・段差・階段・フライオーバーに丸太やタイヤといったものも。乗車のままでは超えられないので、自転車からの乗り降りは日常茶飯事。

20151206-132904_男子Elite_s

2015-16 全日本男子 Elite @飯山

「自転車レースなのになんで担いでんの?」

いやいや、そんなモンです。

路面もアスファルトのみならず草地に泥に砂地あり。天候によっても大きく変わる。

自転車を漕ぐパワーだけでなく、路面に合わせたペダリングスキルも必要となる。乗り降りや担ぎのスムースさも必要だし、その時々のコース・路面・バイクの状況に合わせた判断力も勝負の鍵を握る。

そんないろいろな要素の詰まったレース。

パンクや機材トラブルがあったり、時にはライバルとラインをめぐって肩を突き合わせながら、レッドゾーンな強度でゴールへ突き進む。

個人的には Cyclocross レースを始めた頃は単純な楽しさだけだったが、突き詰めてくると体力やテクニック・判断力など自分やチームの持てる全てを使って勝負が決まるレースだと感じるようになってきた。それもまた面白さ。

そんなちょっとヘンテコで、熱く楽しい競技。